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重金属青年団


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作者:花村萬月
発行:角川書店 1990.11.25 初版
価格:\1,400(本体\1,359)

 『ゴッド・ブレイス物語』と同種の作品だが、より鋭利に過激にワイルドな一団の物語。ぼくはバイクにはド素人で、二輪のこととなると、全然といっていいほど、きれいさっぱり知らないのだが、この一団はKATANAなんてナナハンのグループ。そこにブンガクさんというシャブ中のおっさんを、語り手である水商売の女性ライダーが連れてくるところから、この小説は始まる。作者本人があとがきに書いているように、たいして小説の体裁をなしてもいず、まさに作者本人の道楽で描き上げたような作品。本人も時効だから言うが、と『聖殺人者イグナシオ』のあとがきで、ドラッグ経験のことを書いているが、この小説での薬中の扱いぶりはリアルで、かなり気持ち悪い。

 例によって世間からはぐれた一団なので、元ヤクザ、ミュージシャン、少年レーサーといったところが顔を揃え、桁外れの暴力シーンもあればSEXシーンにも溢れ、かなりどぎつい青春群像なのである。でもそれは、原色の毒々しい、三流の極彩色では決してない。およそ正直にストレートに生きようとしつつも、抑圧され屈折した彼らの心理に向けられた作家の情愛として描かれた部分で、どうしようもなく優しく女々しい色調に見えてしまうところが、この作品・この作者の持ち味なのだと思う。作家の感情移入も甚だしいのである。

 そういうわけだから、嫌いな人は、こんな作品はとことん嫌いなのだろう。ちなみにぼくは、楽しく読めた(^^;)

 前半は都下の「ヘビーメタル・カフェ」という彼らの溜り場を中心に、後半は北海道へ向かう。後半が新潟経由で日本海沿いに北上し、知床まで突っ走るのだが、後半ちょっと息切れしちゃったか、仕上がりを急いだか、東京~新潟の描写に較べて、新潟~知床の描写が異様に短いのが何つーか、ちょっと気に入らんのが、北海道ファンの気持ち(^^;)

 羅臼からは知床岬への道を行くのには驚いた。このルートはまさに山屋の好きなルートで、道なき道を時々海岸をへつったり、岩場を登降したりする部分だ。一昨年うちの山岳部学生が行ったところで、その直前に行ってもいないのに憧れだけ持っていて妙に詳しいぼくは、彼らに相談を受けたりしてもいた場所でもある。なんか、この作家は感性と言うか、ぼくは共感を感じるところが多いし、好きな場所も似通っているみたいで、たまらん(^^;) そういえば途中無人の番屋が出てくるが、ここは現実には老婆が一人住み込んでいるはずである。

 また、作中登場する「ひかりごけ」は昨夏ぼくは見てきたばかり。巻末に出ている参考文献には武田泰順の「ひかりごけ」も出ているが、ぼくの好きな『北海道探検記』(本多勝一)が共に並んでいる。滅び去ったパイロットファームの跡など、なかなか優れもののシーンに溢れた旅行記なのである。ううむ、萬月さんは自分に視点が似ていてなかなか気に入ってしまう作家だ、と思いきや、このひと作家になるきっかけは旅ルポものを書いてみないか、と言われて、その手の仕事を引き受けたことだったらしい。全国放浪ってのも、最後にものになるのなら、なかなか贅沢な人生だな。

(1992/02/01)