転々


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題名:転々
作者:藤田宜詠
発行:双葉社 1999.4.30 初版
価格:\1,800

 ぼくは東京生まれである。駒込に生を受け、その後乳幼児の時期を北池袋で過ごした。その後埼玉に移住したが高田馬場の予備校時代には、その頃付き合いのあったガールフレンドたちとよく東京を歩いた。午後いっぱい足が棒になるまで歩いたこともある。東京の風景は意外に変化に富み、飽きることがないばかりか多くの発見さえあった。金のない身分には最高の贅沢であった。

 その頃のことをふと思い出させるのがこの一冊。ふとしたきっかけで東京を歩き出すことになった二人の男。出来損ないのでこぼこコンビたちが繰り広げる東京散歩とドラマの数々。ある意味でミステリアスであり、ある意味でハードボイルドであり……。

 藤田宜詠は東京の街を描くのが上手な作家だ。同じ書き手として今飛ぶ鳥を落す勢いの浅田次郎という作家がいるのだが、浅田に匹敵するどころか、浅田を超えるような作品を書ける作家というのは、今のところこの藤田宜詠しかぼくには思いつかない。

 『じっとこのまま』は地味だが『鉄道員(ぽっぽや)』以上に感銘を受けた短編集だし、本書『転々』は浅田の『天国への100マイル』に類似の雰囲気を漂わせながらも、少々ペッパーの効いた、より大人むけのファンタジイとでも言いたくなるほど素敵な作品であった。こういう作品を書ける作家がいて、こういう作品を読み終え閉じるときに、本という世界の持つインナースペースの拡がりを温もりとともに感じることができる。

 スケールは小さくてもとても大きな冒険小説が書けることの見本のような珠玉の一冊だ。

(1999.10.28)