地獄までドリブル



題名:地獄までドリブル
作者:藤田宜永
発行:光文社文庫 1994.12.20 初刷
価格:\540(本体\524)

 この人の小説は、佐々木譲とならんで、ぼくは大変読み進みやすい。この本も題材はフランス暗黒復讐小説みたいなもので、その錯綜した筋運びのわりに軽々とページを繰れるんだけど、それは文体のピッチのせいなんだろうか?

 とにかくあっという間に読み終わってしまったけれど、タイトルやカバーにつられたサッカーそのものは案の定あまり表面に出てこず、サッカー界の黒い金の流れみたいなもの (これも現実の重みはあるんだけど) を追求するに留まっているのであった。プロサッカー・チームの監督が陰謀に一枚噛んでいるらしいところなどは、Jリーグから非常に離れた感覚で、何ともであったけど、それなりに欧州サッカーではこんなこともありそうで怖いのである。

 Jリーグの開幕前夜の舞台背景。息子の死を探る父にしては動きに卒がなくプロっぽいところが気になるが、フランスの黒い闇を探るにはこのくらいタフな父親じゃないと勤まらないって感じもありそう。それなりに楽しめた一冊でした。

(1995.04.11)
最終更新:2007年06月03日 22:19