ひまわりの祝祭





題名:ひまわりの祝祭
作者:藤原伊織
出版:講談社 1997.6.13
価格:本体\1,700

 そこそこの作品を書く作者だなとの印象。この作品もそれなりに楽しく読み進めるし、文章もその作者の経験なり年輪なりにこなれて熟成している。プロットに凝っているし、ある意味でのパーフェクトさを持った、商品価値のある一冊であると思う。

 でも、最近このレベルの本、このレベルの作者って多いな……と感じる。適度な独自性、適度な面白さ、それでいてのめりこむほどの求心性を持っているわけでもない。商品価値は認めるけれど数年も覚えていられる本とも思えない。そこまでは面白くもないし、共感もない本、本、本……。

 そうでない特殊な本に多く親しんだぼくが、この手の本に特別な親和性を感じ取り抱くことができないのは、ぼくのせいばかりではないと思う。時代のニーズと言えばそれまでだが、かなり偏屈な書店の風変わりなコーナーにしか探すことのできなかった冒険小説とかハードボイルドのジャンルが、あまりに日の目を見過ぎているせいなのではないか、と思えないこともないのだ。

 その典型が直木賞で、時間と選者との読書量の貧しさを感じざるを得ないところがある。受賞作品が相対的に見て腑に落ちないことも多いし、かなり予想しがたい要素に溢れていそうな気配がする。そんな時代のニーズが、こういう巧くって、如才ない作品を世に出しているのだという気がする。

 こんなことを書くのも、次第にこの手の作品に面白さを感じ、近い将来このレベルで満足してしまうぼく自身のことを、ぼくはもっとも恐れているからなのだろう。

(1997.08.31)