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ハポン追跡





題名:ハポン追跡
作者:逢坂剛
発行:講談社 1992.9.30 初版
価格:\1400(本体\1,359)



 短編集『クリヴィツキィ症候群』、長編『十字路に立つ女』でお馴染みの現代調査研究所の調査員・岡坂神策のシリーズで、今度もまた短編集。作者は当分、この人物をシリーズ化してゆくに違いない。スペイン現代史に造詣が深く、フラメンコ・ギターのレッスンに通い、御茶水に事務所と塒(ねぐら)を構え、古書店巡りと来ているので、まあ作者にとっても読者にとってもなかなか親しみの沸く人物ではあるのだ。

 短編集の感想は難しいのだけど、ぼくのように気に入った作家の本は全部読みたい、だから読んじゃう、という趣向の人でなければ、好き好んで短編集なんかに手を出さないのかもしれない。まあ、そういう意味では逢坂剛という比較的短編の名手と言われる作家でも、長編の味わいに較べてどうか、と言われりゃ返す言葉はぼくにはない。まあ、楽しみ方が違うのです、としか言い様がないのだ。

 さて収録作品。『緑の家の女』はこれだけ87年作品。『消えた頭文字』以降は91年作品だから割りと間があいているのだなあ、と思いきや、この間に『十字路に立つ女』が入っているわけで、このへんの思い出話なども出てくるのはシリーズものとしてのサービス心であろう。ともかく最初の二作は、あんまり面白くはないのである。

 『首』はいきなりサイコ・サスペンスとなって、これは作者お得意な分野だから、まあ面白くなります。『ハポン追跡』でこれが一気に盛り上がる。「ハポン」はスペイン後の「日本」だが、これがスペインのある地域に多い姓であるという。もしや日本人の末裔がスペインに・・・・? というドキュメンタルな興味を横軸に、スパイ戦という縦軸が絡むと、ううむと唸らされてしまうのである。

 ラスト。タイトルが『血の報酬』というのだが、これがそうかそういうわけかという引っ掛けを感じさせる題名で、作者の遊び心に驚く。これはどちらかというと作者の第三の得意技である警察ものが絡んでいる。ホント、岡坂神策って作者の分身なのである。読み終わってみて、感じたのは、やはり逢坂剛は短編の名手であるということなのであった。



 PS.そういえば『射影はるかな国』も女性主人公が、『十字路の女』と同じなので、このシリーズの一端であるかもしれない。本書にもヒロイン理恵は少しだけ顔を出し、『射影はるかな国』のいきさつを神策に報告していたりするのである。

(1992.12.06)