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裏切りの日日





題名:裏切りの日日
作者:逢坂剛
発行:集英社文庫 1986.7.25 1刷 1990.7.25 7刷
価格:\390 (本体 \379)



 さて警察シリーズの第一弾長編作品ともなったのが本書で、百舌シリーズに先駆けてはいるものの、これは新作『砕かれた鍵』に較べてもだいぶ纏まりがよく緊迫感に溢れた作品であるように思う。倉木をイメージさせるような切れ者の刑事桂田が主役なのだが、これが決定的に倉木と違うのが、どうも悪徳刑事らしいという「灰色の」部分。

 右翼の大物の暗殺事件と、ビルの篭城事件が同日同時刻に発生し、どちらの犯人も忽然と行方をくらます。さて犯人は? トリックは? というミステリーの醍醐味を秘めながら、霧に包まれた桂田の過去と変貌が若き刑事浅見によって探られてゆく。そこに暗示的な登場をするのが津城警視で、警察内部の犯罪を調査する特別監察官というその肩書きはこのときからずっと変わらないものである。

 一気読み以外には考えられないような面白小説で長さも手頃で、なおかつ半端なトリックでなく高く評価してあげたいエンターテインメント。最近エンターテインメントと純文学の壁が徐々に取り払われてきている傾向を感じているけれど、逆に娯楽小説というジャンルにこうして徹していながらその技術的な面で高品質をキープしてくれる作家というのは、それなりに貴重なのではないか?

 「娯楽に徹する」イコール「作品を量化すれば事足れり」とする作家が蔓延する中で、やはり作家以外にきちんと安定した収入を得ている逢坂剛はゆとりを持って創作に望んでいるのだと思う。いつまでも急がずじっくり、いい作品を、その職人芸でもって編み上げて行って欲しいものだ。

(1992.07.30)