きみ去りしのち



題名:きみ去りしのち
作者:志水辰夫
発行:光文社 1995.6.30 初版
価格:\1,400(本体\1,359)

 前短篇集『虹物語』はボロクソ言わせていただいたけど、これは打って変わって評価高くしておきたい短篇集。日本風で言えば中編集かな。70ページ前後の作品が4作。ジャンル分けしちゃえば青春小説。

 思えば志水辰夫のハードボイルドもいい小説はそれ自体青春小説でもあったかな、と思わせる、香気高い作品群です。短篇集も藤田宜永といい、志水といいなかなか出色で、下手なハードボイルドより遥かに感動させてくれるところは、ぼくは稲見一良効果あたりが大きいのではと勝手に解釈している。

 青春の中で触れる異性の描写がとにかく良かった。幻想性とリアリズムが混然一体となったあの感覚って、本当に懐かしく、どの主人公の描写も、まるで自分のことを書かれているみたいに気恥ずかしくなり心が疼く・・・・そんな原初的風景に出会えると思います。男たちは読むべし。

(1995.08.26)
最終更新:2007年05月28日 21:45