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拳銃(ガン)/ 「魔の拳銃」改題


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題名:拳銃(ガン)
原題:GUNS (1976)
作者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:久良岐基一
発行:ハヤカワ・ミステリ文庫 1980.4.30 初版 1986.7.15 2刷
価格:\420

 マクベインの死を悼んで、古い未読のノンシリーズ作品に手をつけてみた。

 こいつは、87分署シリーズのような健康的なクライム・ミステリでないばかりか、銃によって狂ってゆく若い犯罪者の救いのない破滅的な一夜の物語だった。マクベインには、ノン・シリーズのものにも光るものが数多くあるが、エヴァン・ハンターと共著と遊んでみせた『キャンディランド』にせよ、異色作『盗聴された情事』にせよ、どちらかと言えばシリアスで、ペーソスに満ちたものが多い。一言で言えば暗い小説が多い。

 87分署シリーズで見られる犯罪の多くは当然、被害者を伴う残酷なものだ。世相を反映した、都会ならではの救いようのない犯罪だって多い。『灰色のためらい』みたいに、犯罪者の孤独にフォーカスした異色作だってときには見ることができたし、もちろん心臓に突き刺さったような物語は後年になってもずっと読者のどこかに残ってしまう。

 エド・マクベインはノワールの作家とは普通見られてはいないが、『キャンディランド』の男の孤独といい、本書の若き破滅的犯罪者の、目的のない片道切符ばかりがやけに悲しく心細い真夜中のストーリーといい、今手にとってみて驚くほどに、これは暗黒小説である。もちろんマクベイン節とも言うべき、独自の文体が紡ぐ詩情性は作品のかしこにある。だが物語そのものは、どうしようもなく非情だ。

 たった一夜の強盗。殺人なんて避けたかった三人組が、運悪く警官の待ち伏せに出くわし、銃撃戦となる。逃げ帰ってからの三人のその後の物語を追うスタイルは、まるで『レザボア・ドッグス』のように皮肉で、必死で、血まみれだ。その後に続く悪夢の逃避行で、出くわしてゆく、悪魔的人間たち。これがマクベイン? と思われるほどに凶暴な一夜を、クールに描く。

 銃に狂ってゆくのに、ジェシー・ジェイムズにもビリー・ザ・キッドにもなることのできない、あまりに若い命の奔走。エヴァン・ハンターの名で出ても不思議ではない重さをクライムの書き手マクベインの名義で敢えて書いたのだろう。

(2005.07.24)