マネー、マネー、マネー


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題名:マネー、マネー、マネー
原題:Money, Money, Money (2001)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:山本 博
発行:ハヤカワ・ミステリ 2002.9.15 初版
価格:\1,200




 珍しく序章が添えられている。本書は2000年末に書き上げ2001年9月に発刊となっている。まさに世界貿易センタービルへのテロに重なったとの意。事実がフィクションに重なってゆくことへの世界の脅威を静かに語りつつ、物語へ入ってゆく。

 最初はあまりのぶつ切れな展開ゆえにわかりにくかったのだが、通常では見られなかった国、土地、職務の人々が登場し、これは確かに<87分署>シリーズだろうかと改めてカバーを確認したくなるほどにアップテンポの国際的スケールで始まった。そして残酷な死。乾いた筆致。その客観的な描写が一貫して続くのがこのシリーズの特徴でもあるのだけれど。

 登場人物の多さ、多様さ、あらゆる人物がアイソラの<87分署>管区に雪崩れ込んできた観のあるサービス満点の本書。空き巣狙いから国際テロまで犯罪のスケールもさまざまであり、大規模テロを狙うビン・ラディンの一派にまで物語が繋がってゆき、ある想定されたテロ現場が巻末のクライマックスになってゆく。もちろんこれが書かれたときには、その何倍ものスケールで現実のテロリズムがアメリカに上陸するとは作者も編者も想像だにしなかったろう。それが序章では悲痛な様子で語られている。

 ある意味では<87分署>らしくないスケールの話でもありながら、きちんと刑事たちが少しずつ顔を出すオールスターキャスト。キャレラの家族に関するエピソードが横軸になって別の展開を見せており、繊細でドラマチックだ。

 前作に続きオリー・ウイ-クスは主役級で登場。欠点だらけの刑事だけれど、性格が悪いとも言い切れず、ナイーブなところさえあるみたいで、ラストシーンが秀逸。次作のタイトルが "Fat Ollie's Book" だそうである。本書はきちんとその序章の役を立派に果たしたと思う。かなり笑える。

 さまざまな顔を持った、相変わらず街とその時代とが真の主役であるシリーズである。

(2002.11.16)