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魔術


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題名:魔術
原題:Tricks (1988)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:井上一夫
発行:ハヤカワ・ミステリ 1989.02.28 初版
価格:\800

 久々に緊迫感あふれる一冊。ポイントはまたしても濃縮された時間。ハロウィンの夜の始まりとともに本書は幕を開け、万聖節が明ける深夜のアイソラへと疾走を始める。手に汗握り、不眠の朝を生み出す本とはこういうもののことをいうのだ。もし<87分署>シリーズになにか他の作品で触れてどうしても気に入らなかった人には、本書、あるいは『殺意の楔』をお薦めしたい。なぜならこれらは短い時間に閉じ込められたとても濃密な物語だからだ。

 まず冒頭でいきなりいくつもの事件が勃発し始める。バーンズ警部はハロウィンに備えて、通常より多めに刑事たちを夜の街に送り出す。その数に見合うだけの事件の山。子供たちの集団が次々と酒屋を襲い店主を殺してゆく。凶悪である。そして奇術師の失踪。バあるいはラバラ殺人。連続売春婦切り裂き殺人までも。これらが夜通し、刑事たちの頭を悩ませることになるのだ。面白く読めないはずがない。

 そして事件の裏にある刑事たちのいつもの人間ドラマ。アイリーン・バークが心の傷を自分で縫いつけている。珍しく刑事の心に立ち戻ったアンディ・パーカー。オブライエンとウィリスのチーム。ブラウンとホースのチーム。そして賽の目が凶と出てしまったキャレラとマイヤーの黄金コンビ。実に目まぐるしい一冊。その中で疎かにされることのない、犯罪者たちのそれぞれ個性的な描写。しっかりと嵌まるべきところに嵌まった構成の職人、マクベイン妙技が光る。

 ちょっとした描写で時代背景が語られるのも本シリーズのの特徴だが、映画『ET』や『ランボー』が登場し、マイヤーは『刑事コジャック』を懐かしむ。どうやらすっかりシリーズは現代のものとなり、読者のぼくは自分の実人生を振り返るかのようにとうとうここまでやってきた。そしてぼくの手元にはあと一冊を残すばかりだ。改めて本シリーズが素晴らしい逸品であることを確かめながら、ぼくはいま邦訳された最後の作品『ララバイ』のページを開きつつある。

(1990.11.29)