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八頭の黒馬



題名:八頭の黒馬
原題:Eight Black Horses (1985)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:井上一夫
発行:ハヤカワ・ミステリ 1987.04.30 初版

 さて前作でほとんど予告されたような形になっていたが、本篇は<87分署>の好敵手デフ・マン、四たびの挑戦を描く。常に警察を利用するかたちの犯罪計画を綿密に練りあげるデフ・マン。スケールの大きいフェアな犯罪を心がけてきたデフ・マンは、既に本シリーズ屈指のキャラクターである。そして彼の登場する作品はちゃちなミステリを遠く離れて、警察対デフ・マンという真っ向対決の図式で途方もなくスリリングなものになると相場が決まっているのである。

 デフ・マンのやり口のきわだった特徴は、警察を無能視するかのごとく、犯罪を前もって予告してくることだ。しかしそれは正当な予告ではなく、少しばかり捻りのきいたものだ。本書では最初に八頭の黒馬の写真が送り付けられてくる。続いて、ヒントの数々が日を追って送りつけられてくる。どれもがすべてキャレラ宛でだ。キャレラとデフ・マンというのは、お互いの体に銃弾を一回ずつ撃ちこみ合った仲なのだ。

 計画はいつもデフ・マンのペースで進む。しかし、すんでのところで小さな偶然が彼の途方もない犯罪を頓挫させる。さて本篇は、ずばり<87分署>そのものに狙いを絞ったデフ・マンの大博打と言っていい。これまでの因縁に一気に片をつけようというのだ。ここまでのデフ・マンとのやりとりを全部読んできた読者には、まさにとっておきの一冊と言える。そして現在刊行されている最後のデフ・マン登場編。来日パーティの際、マクベインはデフ・マンの話を既に一冊予定していると言っていた。おそらくデフ・マンとは近い将来にふたたび会えるに違いない。

 さてシリーズ残り三冊(現在の邦訳に限って)。気合いを入れて取り組みたい。

(1990.11.22)