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カリプソ


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題名:カリプソ
原題:Calypso (1979)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:井上一夫
発行:ハヤカワ文庫HM 1989.07.15 1刷
価格:\520

 確かにシリーズの文体が変わってきている。以前は必ずといっていいほど踊っていたはずの気障なまでのリリカルな文体が、最近ではもうすっかり影を潜めている。最初は二十代で『警官嫌い』を書いたマクベインだって、その後二十三年もの時の流れに晒されたのだ。文体だって当然変わる。初期には年間三作ほど書いていた本シリーズも、今では年一冊となり、その分内容が重厚なものになり、表面的なスリルよりは、刑事たちの日常や心情をより深く抉るように書き込んでいるのがわかる。文体はそれなりに丁寧になった。踊るようなスタイルはもうないが、シリーズは確実に熟しているように思われる。

 ここではシリーズではもう何度目かになると思うが、監禁が扱われている。あまり内容を言ってしまいたくはないのだが、その監禁時間の長さという項目だけを見てみると、他の小説群をひっくるめても本篇は唯一無二かもしれない。そしてその凄惨さもシリーズ中他に類を見ない。カリプソ歌手の殺人を発端に刑事たちの捜査が始まるが、その一方で犯罪者の描写が挟まれてゆく。刑事たちの捜査がなかなか犯罪者に近づいていこうとしない点が、《読者の知》を与えられている我々には歯がゆく、重い。

 その凄惨さゆえ、評価がまっぷたつに別れてしまっているというこの作品。筋運びはともかく、小説としての完成度のほうをぼくは評価したいと思う。単純な面白さの側面から見たとしても絶品であることは間違いない。作者の筆力にはいつもながら感心させられる。これはシリーズ中でもかなりの上位に食い込むことのできる傑作であると思う。

 翻訳で少々気になるのだが、マイヤーの奥さんの名が「サラ」から「セアラ」に、「煙が丘」が「スモークライズ」に変った。後者のほうが音として当然近いのはわかるのだが、長いこと慣れ親しんだセミ・レギュラーや土地の固有名詞が表記上変わってしまうのは、シリーズ読者にしてみればかなり鬱陶しい。翻訳文自体は全然問題ないのだから、複数の訳者できちんと固有名詞を統一したというシリーズ初期の緻密なスタイルはきちんと踏襲してほしいものである。

(1990.11.03)