命果てるまで



題名:命果てるまで
原題:So Long as You Both Shall Live (1976)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:久良岐基一
発行:ハヤカワ文庫HM 1979.11.30 1刷
価格:\420

 本シリーズを読み始めた年、春の時点でこの一冊が見つからなかった。他にも入手するのに苦労した作品が少なからずあったのだが、どれもNIFTYの書籍宅配で探し当てることができていた。しかしこの『命果てるまで』だけは現在再版予定がわかりません、とつれない回答。ぼくがこれを書店で偶然見つけ手に入れたのはつい先月のことである。この本のためにシリーズ読破のペースをわざわざ遅らせてきたのも事実である。長いシリーズを順序よく読むことにこだわるなら、まずは本を揃えておかねばならない。注意すべきことだと思う。

 さて本書自体がなかなかもったいぶった出現のしかたをしただけあって、内容もサスペンス満点。出色の作である。『死が二人を』以来、シリーズでは二度目になる結婚式のシーンが始まる。バートラム・クリング。<87分署>中、最も災難多きこの刑事が、本書にてふたたび不運なできごとに捲き込まれてしまう。クレアが死んでから十数年。彼だってもう若くない。

 またこの本の魅力は、83分署のオリー・ウィークスが再登場し、ほとんど大活躍して見せることである。人種偏見の強いこの刑事をキャレラは嫌っているのだが、捜査の腕に関しては第一級。しかもオリーのほうは<87分署>をいたく気に入ってしまうという皮肉な設定のなか、彼のペースで捜査は進んでゆく。前の初登場作『糧(かて)』に比べるとオリー・ウィークスはずっとヒロイックな存在になってしまう。

 最後まで独特の味わいを残して去ってゆくオリーは、この作品ですっかりシリーズの新セミ・レギュラーとして、なかなかの存在感を持つようになってしまう。アンディ・パーカー刑事のアクの強さもオリーの前には形無しといったところである。事件も今回はスリリングで面白い。狂気の犯罪者もかなり見せ場を作る。眠る前に読み出してはいけない一冊だと言える。

(1990.10.28)