死が二人を



題名:死が二人を
原題:'Til Death (1959)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:加島祥造
発行:ハヤカワ文庫HM 1977.4.15 1刷

『死が二人を分かつまであなたは夫を愛し続けますか?』教会での婚姻の席上、神父がこんなことを言うシーンに多くの映画や小説のなかで出くわすものである。ぼく自身結婚式は教会で行なったのだが、確か『死が二人を』というセリフは神父の口からは出なかったように思う。リハーサルを行なってのことだから記憶は確かだ。ともかくこの小説は『死が二人を』。原題は"'Til Death" 。

 物語はキャレラの妹の結婚の日。新婚の二人を快く思わない連中がいて、嫌がらせをしたり命を狙ってきたりする。そこで彼らの保護に当たるのが、キャレラ当人と、非番のコットン・ホース、バート・クリングの若手両刑事だ。容疑者は本当に何人もいるし、動機もあちこちに存在して、なかなかミステリアスな設定である。ゆっくり、じわじわと進行していくストーリーも、キャレラたちが最初に命を狙われたところで突如、動的なものに変化する。そのまま一気に後半部へ突入といった、これまた出色のドラマとなっている。

 この作品ではキャレラの両親や妹が初めて登場するなど、キャレラのプライベイトな部分が中心になっているという点も、シリーズ・ファンの食指をそそるところ。また、どういうわけか犯人に殴られることがたいへん多いコットン・ホース刑事は、今回も例に漏れず犯人に叩きのめされてしまう。だが、前作で訊き込み中に知り合ったクリスチン・マックスウェルを本作ではしっかりガール・フレンドにしているところなどは、彼らしきご愛敬といったところか。

 とにかく話を重ねるごとに、面白さを増幅させつつある本シリーズと言える。

(1990.05.08)
最終更新:2007年05月27日 12:32