殺しの報酬


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題名:殺しの報酬
原題:Killer's Payoff (1958)
著者:エド・マクベイン Ed McBain
訳者:井上一夫
発行:ハヤカワ文庫HM 1976.12.15 1刷

 心浮き浮きさせてひさびさに<87分署>シリーズを手に取る。クロネコヤマトの本探索能力に敬意を表しつつ表紙を開く。至福のひとときなのだ。

 ここのところコットン・ホース刑事が主役を勤めているが、作者はこの刑事を今後どのように扱ってゆくのだろうという興味が尽きない。訊き込みの先々で、美しい女たちとお知り合いになってゆくし、刑務所を見上げるシーンでは、彼がいずれこの刑務所と深く関わるというような妙な予告めいたことが書いてある。ということはシリーズの何冊か先のことまで作者は間違いなく考えているということになるのだろうか。

 そうしてみると<87分署>は、シリーズ全体が、まだ完結していないひとつの長篇小説として価値もあるのでは、などと深く感じ入ってしまう。シリーズものというのは、ある程度そのあたりの興味をも含有しているものだとは思うが、たいていはもっと行き当たりばったりであるような気がする。だからチャーリー・マフィン・シリーズだってひどい中だるみがあった。スペンサー・シリーズも迷いに迷っているように見えることがある。<87分署>はぼくの読んできたうちでは最も息の長いシリーズになるのだが、かなりプロット……特にキャラクター中心のプロットを作っていると言える。だからこそ順番に全部読むしかない、という気がする。

 それから訊き込みのときに、これはアメリカというお国柄もあろうが、だれもが刑事たちを相手に愚痴を言う。なかなか訊き込みの手順に入れない。例えば郵便局では局員が、配達の苦労話を長々とやるのである。様々な職種の人々が、それぞれの実に個人的な興味を開陳して、刑事たちの耳に余計なことをこれでもかといわんばかりに詰め込むのである。そしてこれらが馬鹿に面白いというのもこのシリーズの特徴であるな、などと思ったりしてみたわけである。それらさまざまな庶民が街を構成し、シリーズを構成しているのだとも。

(1990.04.25)