諸氏乱想



題名:諸氏乱想  トーク・セッション 18
作者:船戸与一
発行:KKベストセラーズ 1994.6.10 初版
価格:\1,748

 ハードカバーで買っておいて積ん読しているうちに文庫化されて安い値段で書店に並ぶ。この時点になって慌てても遅いのに、何だか悔しさが先に立ち、思くてかさばるハードカバーを意地になって読む。読んでみたら、意外に面白く、かつ対談集であるのでさらっと読める。そうした、自分にはタイミングの悪い本のひとつと言わざるを得なかったけれど、尊敬する船戸与一の本なのだから、内心それほどマイナスには捉えていなかったりする。

 18人のとにかく男っぽく、アウトローっぽい面々と船戸がよく似合う。それぞれが何か一つ規定の路線からはずれていて船戸の対談相手としてよく似合う。男はやはり歳を取ってゆくどこかの時点でがたりとはずれてしまうことが、ひとつ魅力なのかもしれないなあ、などとつくづく思う。

 船戸与一というおっちゃんは見るからにコワモテだし、近寄り難い雰囲気がある。作家たちの立食パーティで見たときも、原田芳雄と二人でぼそぼそと話したりしており、その回りを少し他の人々が遠巻きにしている、という印象があった。ぼく自身ある評論家と飲んでいた折り、船戸から評論家の元に電話が入りさて一緒に飲むか飲まぬかという接近遭遇のところまで行ったのだが、結局船戸さんの方が、ファンを嫌って(だと思う)その夜は遠慮されてしまったのである。

 でもこの対談集を見ると、決して近寄り難い人という印象ではなく吸収力のある人だなあ……とその器のでかさを感じてしまうのである。作家だから吸収力があって、いつも情報を自分の側に取り入れる姿勢というのは、当たり前と言えば当たり前なのかもしれないけれど、やはりこの船戸のおっちゃんが、これほどごく普通に(^^;)人と一対一で素直に語り合える人だってことは、作品のイメージからは予想していなかった。

 さてその対談内容だが、誰もが知っている人もいれば、そうでない特殊業界の人もと、千変万化。スポーツ界からは張本勲、ファイティング原田、荒瀬、文壇からは今は亡き大薮春彦、大沢在昌、中村敦夫(もこのジャンルか)、映画界からは原田芳雄、若松孝二監督、他にカメラマン、思想家、ジャーナリスト、教育家、芸術家、などなど。内藤陳は評論家ではなく芸人として対談に臨んでいます。

 けっこうな迫力の内容だし、今はどこかで文庫化されているので、ぜひ船戸ファンは一読のほどを。

(1998.06.18)