約束された場所で underground 2



題名:約束された場所で underground 2
作者:村上春樹
発行:文藝春秋 1998.11.30 初版
価格:\1,524

 地下鉄サリン事件の被害者インタビューで構成した『アンダーグラウンド』の出版から約一年半が経過しての続編の本書である。形式の上でストレートな続編ではあるが、今度は反対方向、つまり加害者としてのオウム信者たちへのインタビューを構成した一冊である。

 前作との最大の相違点は、自由に話をさせるだけではインタビューが主題から流れるため、作者がどうしても軌道修正を施さねばならないという点であろう。作者は矛先の流れやすいインタビュー内容を、最後には必ず地下鉄サリンという事実の方向へと修正させている。

 ずばり言えばオウム信者へのインタビューと言うのは実につまらない内容である。印象の上で、前作よりはるかに読者的関心が薄れてしまうのは、どこかで信者側の画一性があまりに取れすぎているからではないか。表現方法やオウムとの関わり方はそれぞれに違うけれど、一様に口を揃えてオウムでのひとときを純化してやまない信者たち。

 本当のピュアというものを何に求めるか、ということは人間の究極の価値観であり、生き方の選択肢であると思うが、彼らは揃って他人が作成した出来合いの「ピュア」のほうに己の純心を捧げてしまったのであるように感じる。できあいの手段、他者からの教えに合わせた生き方……それが身近にある現代日本の宗教のモチーフであり限界であるところのものなのか……そんなことを感じさせられる。

 現代というある面では乾いた砂丘の時代。若者たちの他人の生き死にへの無関心が、自分だけは、という選民主義を呼び、水が重力に引かれて下のほうに流れ落ちるように、心は流れやすい居心地の良いほうへと導かれるのだろう。どこかで弱さを秘め救いを求め続けた心が、一般の社会に対してついには開かれる機会を持てないままに、オウムという出口に向かって投身していったありさま。そんな現代の彷徨者たちの現象学とでも言うべきものが、寡黙な言葉の群れとして滴る一冊である。

(1999.01.08)