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アメリカミステリ傑作選 2001


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題名:アメリカミステリ傑作選 2001
原題:The Best American Mystery Stories 1999 (1999)
編者:オットー・ペンズラー&エド・マクベイン編 Otto Penzler
訳者:加藤郷子、他
発行:DHC 2001.06.27 初版
価格:\2,800

 『ケラー最後の逃げ場』ローレンス・ブロック・田口俊樹訳/『父親の重荷』トマス・H・クック・鴻巣友季子訳/『まずいときにまずい場所に』ジェフリー・ディーヴァー・大倉貴子訳/『ルーファスを撃て』ヴィクター・ギシュラー・加藤淑子訳/『ジェイルハウス・ローヤー』フィリップ・マーゴリン・加賀山卓朗訳/他 全18作収録

 アンソロジーなんて滅多に読まない。好きな作家のシリーズ短編などをチェイスしてゆくときにだけ、仕方がなく買ったり借りたりして読むけれど、できたらその短編だけを読んで、あとは書棚に戻してしまってもいいくらいだ。

 そういう気持ちになったのもアンソロジーというのは基本的に無駄が多いと感じるからだ。とりわけ日本のアンソロジーは駄目である。なんでこんな下らない作品が裂いているページのためにこのアンソロジーを買わなきゃ駄目なの? と問い正しくなるような本にばかり行き当たるのだ。

 というわけでぼくはアンソロジー嫌いだったのだが、オットー・ペンズラーが毎年スペシャル・エディターに巨匠(L・ブロック、S・グラフトン、E・マクベイン等々)を迎えて編集するというこのシリーズには目が覚める思いがした。何せ巨匠がいっぱいいるし、知らない作家もいっぱいいるのに、どれもが均一に面白いのだ。それもむべなるかな。その年に発表されたほとんどすべての短編を編者たちが検討した揚げ句(作家からの自慢作紹介まで序文では募っている、というくらい徹底している)、その年のベスト20位くらいに入ると思うものだけを集めるという、これ以上ないような完全主義ベスト・アンソロジーなのである。

 日本でもこういうのがあると嬉しいのだけれど、版権の問題で揉めるだろうと思う。オットー・ペンズラーは彼自身がブランドなので版権を纏めることができるのだと思うし、実際には邦訳した本書の場合も、この年のMWA短編賞受賞作トム・フランクリン"Poachers"に関してだけは版権が取れないため、完全なものとして成立していないのが残念だったりする。

 それにしてもこんな凄いことが実現できるのも、ほとんどすべての雑誌・新聞発表作はペンズラーが、それ以外のものはアシスタントの早読み女史が下読みとして選出してゆくという二人によるミステリー完全取捨選択能力のおかげ。ペンズラーのミステリの定義は「犯罪をあつかった物語」という非常にシンプルかつ最低限なものなので相当数の作品に眼を通しているわけである。ちなみにペンズラーとはミステリアス・プレス(版権:早川書房)やオットー・ペンズラー・ブックス(版権:ソニー・マガジンズ)で有名なミステリ界の仕掛人、アンソロジスト、書評家、作家、書店主。

 さて本書には無名の短編専門作家たちもいっぱい出てくる。アメリカでのこうした短編文化の根強さに接すると、やはり日本は雑誌中心短編が量産されている割に、面白くない作品がほとんどだと思われる。日本は短編となると、急に日本語特有の行間で読ませることを意識しすぎて「情緒」や「上品」に走るゆえに、作品そのものの面白さを失ってしまう。それと作品を量産しすぎて、似通った短編が多くなると言うのも困りもの。

 アメリカ・ミステリでは、ストーリーの面白さに加えて「語り口」「会話の妙」といったところに短編の主たる面白さがあるように見える。これは日本作家たちに是非もっともっと盗んで欲しい文化であるなあと、読者側のぼくは切実に感じてしまったのだのだった。

 と、この本を読んだきっかけだけど、ヴィクター・ギシュラー『拳銃猿』の解説にて、同じ主人公チャーリー・ザ・フックの初登場編『ルーファスを撃て』が読みたかったから。ジャンルをまだ決めかねていたギシュラーがこの短編で絶賛を受け、チャーリーの長編を書いてみたというのが『拳銃猿』。コミック・タッチの任侠ガン・アクションだが、当分この路線で爆走していただければと個人的には願っている。

 短編でデビューして長編作家になってゆくというこうした道程がアメリカにもあるというのは、やはり楽しいことであるように思う。トマス・H・クックなどは初の短編挑戦だったそうである。と、いろいろ楽しみ盛り沢山の密度濃い一冊!

(2003.06.19)