魔弾



題名:魔弾
原題:The Master Sniper (1980)
作者:Stephen Hunter
訳者:玉木亨
発行:新潮文庫 2000.10.1 初版
価格:\857

 ハンターは今ではすっかり狙撃小説の第一人者といった感があるけれど、本書は最近のハンター作品の復活ブームにあやかって何とか日の目を見るに至ったのだと思う。処女作なので、さすがに作りは少し粗めで、贅肉もあり過ぎる。ナチの時代に材を据えるなど、二作目『さらばカタロニヤ戦線』にも見える作者なりの力瘤が何となく見えて、ある種若く初々しい作品。

 何と言っても後にボブ・リー・スワガーによる数々の銃撃数え歌、その元歌とも言えるシーンがこの小説ではしっかりと登場する。残念ながら狙撃手が冷血な悪の側に立っており、読者としては気持ちがその分入りにくい点などは、後の作品『クルドの暗殺者』なみなのだけれど、作者の方は随分この敵射手の狙撃技術面に気持ちを入れているような気!がする。

 後の大きな開花を予感させると言う意味では、二作目とセットで、銃撃の二つのエチュードとでも呼んでおくべきなのかもしれない。

(2001.01.02)
最終更新:2007年05月13日 15:26