悪魔の涙



題名:悪魔の涙
原題:The Devil's Teardrop (1999)
作者:Jeffrey Deaver
訳者:土屋晃
発行:文春文庫 2000.9.1 初版
価格:\848

 ディーヴァー作品はここのところどの作品も似たようなリズム、似たような味わいと、少しだけ金太郎飴化してきたかな? でもそんじょそこらの金太郎飴じゃなく、何度味わっても美味しいテイストであるだけに、このレベルでの品質がきちんと保証されているなら、ぼくとしては問題ない。いくらでも読みたい! できることならもっと楽しく深く驚愕を追求していただきたいところだけれど、こうした本を立て続けに書いてゆくというだけでももう十分に驚愕であるのかもしれない。

 他のシリーズであるべきリンカーン・ライムと、こちらの新しいシリーズ主人公が電話で話をするシーンが作中にある。同じ作者の別シリーズを作中世界に持ってくるというのは実はよく使われる読者サービスである。かつてはロス・トーマスがよくやっており、最近ではR.B.パーカーなどがシリーズを増やしたことなどもあってトライをはじめている傾向にある。

 ただの筆跡鑑定家を主人公に据えて、どこまで面白い本を書けるのかということが、この本の命題であるとも言えるが、事件が片付いたはずの犯人の死の後も、まだ100ページも後が残っているのには驚いた。これも『コフィン・ダンサー』との金太郎飴化の一端であるかもしれない。

 実はこちらの作品が先に翻訳されたけれど、時系列で言えば『コフィン・ダンサー』の後に位置する作品。順番に読まなくても興は削がれないとは思うけれど、これからという方、物語内の時系列をできるだけ整えて順番に読むということに神経を注がれる方のために書いておきます。ぼくはけっこうその種のタイプなので。

(2001.03.18)
最終更新:2007年05月13日 13:30