ボーン・コレクター




題名:ボーン・コレクター
原題:The Bone Collector (1997)
作者:Jeffrey Deaver
訳者:池田真紀子
発行:文藝春秋 1999.9.20 初版
価格:\1857

 リンカーン・ライム。なんと言ってもリンカーン・ライムに尽きる。首から上、そして左手薬指一本しか動かない重度障害者が事件に挑む。ど肝を抜く設定。タイトルの『ボーン・コレクター』が霞むくらいの異常な存在。異常なプロット。よくぞ、ディーヴァーよ、やらかしてくれたと喝采気分の一冊である。

 リンカーン・ライムは元鑑識課員の重度障害者であり、希望を失った自殺志願者であり、そして何よりも誇り高き男であり、切れに切れる天才的捜査官でもある。そして彼を取り巻く面々の個性が、彼のとことん暗い環境を明るくユーモラスに変えている。ライムのまわりに暗さはどこにもなく、むしろ笑いにあふれている。鬼警部アイアンサイド(かつてのTVシリーズの主人公である車椅子警部)などと軽口をたたかれる。

 魅力的なキャラクター。巻き込まれる婦人警官。そして姿なきサイコパス。続いてゆくバイオレンスの予感。あくまでリンカーン・ライムがいて、姿なき殺人者が挑戦と挑発を繰り返す。何度もの戦い。懐かしきあの明智小五郎と怪人二重面相の構図。

 どんでん返しも劇的なスプラッタ・シーンも用意されているし、ライムの破綻もそこからの立ち直りも、しっかりとストーリーの主軸となっている。美人警官との超プラトニックな恋愛あり、捜査陣内の派閥争いあり、そして何よりも最新の科学的鑑識技術を駆使した犯罪捜査が全編を盛り上げている。

 『静寂の叫び』であり余るサービス精神を作品に込めたディーヴァーが、前作を超える作品を作ってくれた。監禁小説の名手とも言えるし、ハンディキャッパーの主人公に特徴があったりもするけれど、何よりも生き生きと人間たちがぶつかり合うこの劇的なドラマ性にこそディーヴァーの真骨頂があるように、ぼくは思う。

 リンカーン・ライムの再登場を心から待ちたい。

(1999.11.06)