コフィン・ダンサー




題名:コフィン・ダンサー
原題:The Coffin Dancer (1998)
作者:Jeffrey Deaver
訳者:池田真紀子
発行:文藝春秋 2000.10.10 初版
価格:\1,857


 今やジェットコースター・ストーリーの名書き手となったディーヴァー。だが、さすがに『ボーン・コレクター』に初めてお目にかかった当時と同じ興奮というのは、ぼくの側が少しだけ覚めてしまっているために、味わい切ることができない。あのときの感覚を蘇らせることはやはり同じようにはできない。

 それでも、腐ってもリンカーン・ライム。犯人との知略を尽くす対決シーンとぎりぎりの救出劇などは毎度毎度のスリル&サスペンスである。一作目から比べても、ぼくの側はともかく、作品としては全くテンションが落ちていない。

 そればかりかラブストーリーの側もさらに一歩前進といったところで前作より遥かにシリーズ化へのサービス清新が明確で、各キャラクターへの愛情すら感じられる。シリーズの生命はこういう人物たちにあると言っても過言ではないだろう。ディーヴァーとしてはただのジェットコースター・ストーリーに終わらせないだけの布石を一作目から十分に打って来ていたのだと言えるのだ。

 サービス度満点。コストパフォーマンス抜群。今、最も高みにある作家の独りであることは間違いない。

(2001.03.18)
最終更新:2007年05月13日 13:24