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ラム・パンチ



題名:ラム・パンチ
原題:Rum Punch (1992)
作者:エルモア・レナード Elmore Leonard
訳者:高見 浩
発行:角川文庫 1998.03.25 初刷
価格:\820

 タランティーノの映画というだけでそわそわわくわくするくせに、『ジャッキー・ブラウン』の原作小説を今もって読んでいないことに罪悪感を覚えていた。しかも文庫解説によれば、タランティーノが最も敬愛する作家(なんてことも知らなかった)エルモア・レナードの作品を一冊も読んでいないなんて、クライム小説ファンとしてはもぐりに近いか。

 とにかく全ての罪悪感とコンプレックスを背中に負う気分に痛めつけられながら、この作品を読んでゆく。読めば読むほどに、痛みは増すばかりだ。こうした傑作小説を読んでいなかった自分が恥ずかしい。レナードという作家に重要さを感じつつ、一冊もここまで読んで来なかった自分は、穴があれば入りたいほどだ。先日、近所の酒場で隣り合わせた兄さんとハードボイルドやクライムの話になりかけたときに、「でもオレはやっぱりエルモア・レナードがいっちゃん好きかもしれねえ」なんてセリフに思い切って相槌を打てなかった自分は今になって赤面の限りだ。

 さて、個人的な羞恥の感情はともかくとして……。もう何度目かになる『ジャッキー・ブラウン』を同時並行的に、しかし何年かぶりに見直してみた。映画は、小説の映画化作品としては、非常に原作の味を忠実に出したものだと思う。タランティーノがレナードに映画化の許諾を直接電話で取ったあたりのどきどき感なども文庫解説に詳しいのだが、それだけに原作の味を損なわないように細心の注意を払い、しかも、結局はエグゼクティブ・プロデューサーに名を連ねてしまったレナード自身もこの作品の脚本、出来栄えに満足しているみたいである。

 ジャッキー・ブラウンは小説ではジャッキー・バークであり、40台半ばの美人であることは共通しているのだが、なんと言っても細身で華奢な白人女性である。場所は映画ではLAだが、原作はマイアミである。それにも関わらず、この原作中最も活き活きしている悪党オーディル・ロビー(映画ではサミュエル・L・ジャクソン)を初め、多くのキャラが、実に原作と映画の間に違和感を感じさせないのだ。

 映画では口を曲げてにやりと微笑む主演のパム・グリアーの美しさはぞくっとするほどクライムの香りが漂っているが、原作の白人女性バークを読んでていてもパムを連想させるくらいに、設定の差を感じさせない。そして映画は映画で、原作は原作で揃いも揃って成功しているという珍しい作品だと思う。

 小説の感想を書いているのか、映画の感想を書いているのか、区別がつきにくくなってしまったが、それも二人の職人が別々のメディアで同じ物語を美味しく料理してみせたせいであると言いたい。映画『ジャッキー・ブラウン』を気に入っていて、レナードの原作をまだ読んでいないという方には是非オススメしたい一冊。同じ物語なのに全然飽きがこないし、どきどき感は映画とはまた別物である。難を言うならただいま絶版中につき古書店でしか手に入らないという事実があるけれども(しかしそう見つけにくいほどのものでもないはずです)。

(2005/02/21)