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ライオンを夢見る


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題名:ライオンを夢見る
作者:矢作俊彦
写真:安珠
発行:東京書籍 2005.12.15 初版
価格:\1,905

 矢作俊彦は、多くのハードボイルド作家同様に、意味のない子供じみた道具、モノにこだわる。ブランドであったり、地名であったり(ヨコハマでありトウキョウではない)、水兵たちの持ち物であったり、カクテルであったりするかもしれない。銃であったり、長嶋茂雄であったり、日活無国籍アクションシネマであったり……。

 子供時代から作家は、多くのモノに対し夢を込めて育ててきたに違いない。作家の想像力を育む、異常なまでのこだわりは、ある意味、その後の作品作りに必要なある種の準備だったろう。

 本書は作家・矢作が、作家・ヘミングウェイを追跡するドキュメンタリーだ。はるかに時代も国も遠いところで生きたヘミングウェイというある意味、これも時代の象徴としての方が、そのすべての作品群以上にセンセーショナルであった人そのものへの興味に突き動かされ、矢作は20年もの長い歳月を、彼にこだわり、旅し、ペンを手にする。

 執拗に繰り返されるのは、ヘミングウェイの幼少の記憶となったワン・シーン。燃やされた灰と残骸をいつまでも見つめる父の気落ちした姿である。開拓時代のアメリカの名残であった宝物を妻に燃やされることによって生じる父の絶望が、子・ヘミングウェイに生じさせた欠損感覚こそが、彼をしてそれを埋めるためペンと紙とに向かわせたとの矢作ならではの論理。

 女性には理解されないが、男の子にとってなくてはならない夢のかけらたちが、矢作の日活アクション映画であり、長島の「巨人軍が永遠に不滅です」であり、ヘミングウェイを追跡する旅であるのかもしれない。その時代を追体験するように書かれたのが、本書にまとまられた二十年越しのルポであり掌編であるのかもしれない。

 作家だからこそ持っていなくてはならないもの、それをヘミングウェイがどこまでも示し続けたように、矢作俊彦という作家が日本という表現のキャンパスに向けて、今後どのように筆を揮い、あるいは切り裂いてゆくのかが、ますます、ずっと楽しみでならない。

(2006/01/29)