東京カウボーイ



題名:東京カウボーイ
作者:矢作俊彦
発行:新潮社 1992.7.25 初版
価格:\1,400(\1,359)

 矢作のすっごく久しぶりの短編集。と言っても半分は連作短編。矢作というのはとっても怠け者の作家なのだろうか? 長編の方が全然面白く書ける作家なのに、気まぐれのように短編集ばっかりいっぱい出している。

 連作短編が多いのは、ちゃんとしたキャラクターを長い一息で描くことができないからなのではないだろうか? とにかく早く『コルテスの収穫』の完結篇を出せよお!

 ま、ぼくは一生出ないほうに賭けるけどね。

 んで、今回の短編は最低。『死ぬには手頃な日』とか『マンハッタン・オプ』などは同じ連作短編でも、一応見せ場が多かったり、文体だけで読む価値があったけど、歳を取った矢作俊彦は次第に一人よがりの世界に沈み始めたらしくて、読者無視も甚だしいや。とにかく、読みにくい場面が多くて……。気取った場面を気取って処理したいのはわかるけど、ここまでわかりにくい短編を連発されると、ちょっと趣味本って感じで、エンターテインメントとは遠い存在であると思う。俺は特殊な都会のファンだけを相手取るんだ、なんて言うなら、田舎者はそっぽを向いてケツをまくってやらあ(失礼)

 でも『東京カウボーイ』連作以外の短編はなかなかよろしい。『暗黒街のサンマ』『スズキさんの生活と意見』は特にいいです。 巨人・大鳳・玉子焼きのぼくにとっては、長島を讃美するときの矢作俊彦は、すべてを無視しても最高です。あ~あ。

(1992.10.11)
最終更新:2007年02月10日 22:40