宴の夏 鏡の冬



題名:宴の夏 鏡の冬
作者:香納諒一
発行:新潮社 1998.9.20 初版
価格:\1,500

 表題作になっている二つの作品が、短編にするには惜しいような地味な骨太の物語だ。『宴の夏』は、なにか五木寛之の短編の匂いがして懐かしい。

 二重三重のどんでん返しを手紙のやりとりで構成した『共犯』は、逆に逢坂剛を彷彿とさせる。この作家にこういうプロットものがありなのか、と少し驚いた。

 全体に少し背伸びした印象のある若い作者の、それなりの大人たちの世界。ぼくは読み終えてみれば『鏡の冬』あたりが好きであるかも。青春の苦い夢……の味わい。

(1998.11.18)
最終更新:2007年02月10日 21:03