さらば狩人/「石(チップ)の狩人」改題




題名:石(チップ)の狩人
作者:香納諒一
発行:祥伝社 ノンノベル 1993.7.20 初版
価格:\800(\777)

 前作に較べてよりプロットが練られた作品で、贅肉がなく、すらりと読める面白さ。人物たちは描写の量にデコボコはあるものの、わりと楽しめるタイプが多かった。難を言えば、少し登場人物出し過ぎ、要するにこの頁数にしてはプロットの練り過ぎかな、という読中感。欲張り過ぎなのは、若手新人ならではの意気込み故かもしれないが、出版社がもっとページを与えてあげたら、もう少し抉れた作品になったかもしれない。そういう期待感は十分に抱かせてくれる作品であったように思う。

 タイトルにすべては込められており、石(チップ)というのはマイクロチップ。コンピューターの日米ハード・ウォーズが謀略の根幹。狩人というのは、マタギ部落出身の姉妹と殺し屋がこれに絡んで来るので、引っかけたものだろう。いわゆる複数主人公もので、ヒーローは前作『時よ夜の海に瞑れ』で受けた安元兄弟。脇役からの大抜擢というわけか。これに、妹を探すマタギの村の姉がヒロインとして絡んで来る。マタギの好きなぼくにはなかなかの本だ。

 今回は、三人称のせいで、登場人物が増えたのだろうけれど、一気に読めば、忘れてしまうようなキャラクターもさほどいない。小道具を使ってなんとか個性を出てゆく点などは、巧いものだ。

 とにかく前作に較べて、今回はパズル・ゲーム的な楽しみが前面に出ているので、せっかくのキャラクターがなんとなくもったいないなあ、との感覚は残る。この作家は、もっとキャラクター重視でストーリーを運べると思う。

 ラスト・シーンは、安元兄弟を描くやり方としてはベストが尽くされていて、けっこうジーンと来てしまった。こういう謀略ものでありながら、志水辰夫『尋ねて雪か』を彷彿とさせるこの手の感動をもたらしてくれるところなんか、やるじゃないか……と素直に呟いたぼくなのであった。

(199.08.08)