寄り道ビアホール



題名:寄り道ビアホール
作者:篠田節子
発行:朝日新聞社 1999.11.1 初版
価格: \1,300

 朝日新聞家庭欄でのコラムを中心とした篠田節子の第二エッセイ集。他に旅のエッセイ、エッセイ自体について論じ合う重松清との対談などがあり、それなりに篠田節子の作家的スタンスが明らかになって興味深い。

 対談の中で「この際カミングアウトしてしまうと、私、エコロのフェミなんです」という下りがある。エコロジストでありフェミニストなんだそうだ。ぼくは彼女の作品に触れるときいつも彼女独特の「文明観」といったものを思い描いていたものだ。その「文明観」の現実への着地点が「エコロでフェミ」であったのかもしれない。

 多くの事象を新聞コラムという形でエッセイにするとき、彼女の見つめる姿勢は、前エッセイ集『三日やったらやめられない』と基本的に変わらない。大人の女性が、前向きにバイタリティで書き綴る文章と、背負っている責任の所在の明晰さが、とてもいさぎよい。これこそが篠田節子という作家の魅力であり、親しみやすさなのだと感じ取れる。

 逆に『女たちのジハード』の受賞の影響で女性の自立やらなにやらの専門家のように扱われるようになったことを疎ましく思っている「作家としての彼女」の側面も、「読者としてのぼく」には理解できる気がする。

 楽しく優しく、それでいて過酷で切れのある作風は、このエッセイを読む限り今後も続くはずである。

(2000.01.16)
最終更新:2007年02月07日 23:58