青らむ空のうつろのなかに



題名:青らむ空のうつろのなかに
作者:篠田節子
発行:新潮エンターテインメント倶楽部SS 1999.3.25 初版
価格:\1,600

 篠田節子という作家は、いつも最終的には庶民の話を書いていると思う。しかしただ庶民の話を能天気に書いてはいない点こそが、篠田節の魅力なのだと思う。彼女の視点はそこに時代相というか、文明批判的な視点が関与していて、常に過酷なまでに冷徹かつアイロニカルなのである。

 災害、食物、経済、住宅、夫婦、家族、介護、虐待……テーマや題材は最も「今」の問題ばかりであり、まぎれもなく日本、そして今ぼくらの身近にあって身を潜めたり、正体を隠して表面を取り繕っているさまざまな汚れた諸々のことであったりする。

 だからこそ、何かを問題として抱えさせられたときに、むき出しになった憎悪や自我がとても怖く、篠田節子という作家はこうしたことをさまざまな形で描き出してしまうのが非常に巧い。

 『夏の災厄』や『イビス』『アクアリウム』といった初期短編においても、そうした方向性は明らかであり、常に災害や食物問題、生き物の未来……といった文明批判的視点が小説のフィルターとして介在しているように思う。

 篠田節子はジャンルなき作家でありながら、こうした確固たる作家的視点を持っているゆえに、その作品世界が独自で豊かなのだと、つくづく思う。いつもどこか無気味で残酷であるけれど、目を背けてはならないものごとが、ぼくらの前には山積みである。現代社会と現代の生のすべてに対する、警鐘たっぷりの短編集である。

(1999.04.12)