第4の神話


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題名:第4の神話
作者:篠田節子
発行:角川書店 1999.12.10 初版
価格:\1,600

 篠田節子の分野については、かねがねぼくは、ホラー、ネパール・ヒマラヤもの、社会VS個人の葛藤もの、そして芸術ものの4つと分けている。おおよそどの作品がどのジャンルに分けられてゆくかは、篠田ファンであればだいたい想像がつくのではないかと思う。もちろん互いに同じ作者から産み出される作品たちである以上、重複は避けられないとは思うけれども、便宜的にとりあえず分類しておくということでは、今のところこんな仕方でいいのではないかな、と密かに思っている。

 ぼくのその暫定的な規範に従うなら、この作品は篠田作品の一つの得意芸である「芸術もの」に分類される。これまで音楽、美術に関しての作品が多かったけれども、小説という題材を直接的に扱うのは、篠田節子としては初めての試みなのではないかと思う。

 亡き売れっ子女流小説家の実像を追うフリーライターが、この物語のヒロインである。ライターであるからには一世一代のノンフィクションを目差している。物語は女流小説家の真実に迫るべく取材を続けるライターの眼を通して語られるのだけれども、亡き作家は次々に生前の意外な側面をあらわにしてゆく。第一の神話とされていた売れっ子女流小説家の評判は、実は第二の神話を隠すものでもあった。

 そしてさらに第二の神話の裏側には深層にある第三の真実へ、さらにまた奥底、第四の神話へ……。「人のこころがいちばんミステリ」というこの本の帯の言葉が、思い出させられる。女流作家の意外な素顔が次々と浮き彫りにされ、それを追うエッセイスト自身もまた一つの神話に関わってゆく。

 しっとりとしていながら強引に読者をその世界へと運んでゆくストーリー。小説家の世界と能との繋がり。多くの愛憎と多くの孤独。こういう大人のミステリを書かせたら篠田節子は非常に巧い作家である。先に読んでいたエッセイ集『寄り道ビアホール』中のエッセイストとの対談内容が見事に作品に生きているとも思った。「エッセイ」「ライター」という職業にいける真摯……珍しい描写、個性的情景に満ちた作品である。

(2000.02.06)