変身



題名:変身
作者:篠田節子
発行:角川書店 1992.9.10 初版
価格:\1,600(本体\1,553)

これは音楽小説? ひょっとして悩める女性の誤った人生を描くような何となく女性版『青春の瑳跌』かあ、などとその前半のつまらなさに、不安に駆られていたのだが、そこは篠田節子、裏切られませんでした、結局。

 他のパニックものとか恐怖小説群に較べるとちと冗長だけど、振り返ってみると、なんとこういう登場人物たちの癖の多さを描くことによって、プロットを組み立てちゃったわけかあ、と思わせる錯綜の結末。

 脇役男性の行く末に関しては少し強引かなあと思ったくらいだけど、とにかくこの人は修羅場を描きたいのだ、修羅場を作るような心を持った女の破滅を描きたいのだなと妙に納得してしまう。そういう説得力のある描写といっていいのだろう。

 本当にこんないやな女が実在しそうだから怖いのである。

(1995.05.28)
最終更新:2007年02月07日 23:02