探偵の探偵 桐嶋颯太の鍵




題名:探偵の探偵 桐嶋颯太の鍵
著者:松岡圭祐
発行:KADOKAWA 2022.11.22 初版
価格:¥700-



  松岡圭祐の作品を読みやめてしまったのは、確か千里眼シリーズの途中。

  最初は『催眠』から始まって人間の心理を読んだり操ったりすることの面白さに 
 重心があったはずが、国際レベルの陰謀ものといった題材の巨大化と活劇がメイン
 になってしまったことと、いくら何でも風呂敷を大きく広げすぎだろうという、や
 り過ぎ感が鼻に着くようになったから。

 そう書いたのはもう7年も前のこと。何だか懐かしくなって、区切りよく標題の本が出たものだから久々に読んでみたのだけれど、7年前の感想をそのままこの本の感想にスライドさせてしまっても良いな、と思うくらい圧倒的に空しい感覚で本書の最終ページを閉じた。

 大風呂敷は相変わらずであった。人間のできていない性欲満点の異常夫婦が巨大企業の経営者。彼らが銃の法規制の時代に終止符を打たせ、銃器部品を密輸・製造する巨大工場を建て、日本全国に銃器を密売して利益を独占し、アメリカのような銃で片を付ける国家への改造を目指すというもの。まるで漫画だ。

 その途方もない悪だくみを頓挫させる宿命を負うのは、敵方社長が入れ込んだ女性バーテンダーの死の謎を探るスマ・リサーチという探偵の探偵会社のシリーズサブ主人公であった桐嶋楓太。いわゆるある女性の死の謎を探ると、壮大な日本改悪を企む秘密組織の社長に行きあたってしまうという偶然もいいところの話。やはり漫画だ。

 後半、死んだ女性の妹と共に拉致されるヒーローの苦しい状況が続き、最後にはアクションと戦闘シーンによる混沌の中の対決となる。漫画。

 というわけで最後の方は馬鹿らしくなって斜め読みとなってしまった。今度こそこの作家に別れを告げようと思う。珍しくネガティブ・レビューなのでここ以外のメディアには本書のレビューを掲載しません。

(2023.4.15)
最終更新:2023年04月15日 15:16