アクセス



題名:アクセス
作者:誉田哲也
発行:新潮社 2004.01.15 初版
価格:\1,400

 現代的な道具と言えば携帯、パソコン、ネットワーク。これらを駆使したホラーはこの一冊だけではないと思う。今どきどんなプロットでこうしたホラーが作られているのか興味があって、本書を読んでみた。ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。大賞受賞でないだけに、文章の下手糞さに実のところお手上げになりそうな序盤だった。だが中盤からの展開が楽しく、それなりにうまく纏め上げた印象のあるラストまで一気読みだった。

 流れや展開の軽妙さについさらさらと読んでしまったのはいいけれども、実のところここで扱われている材料自体は、現代人が懐に隠し持っているどろどろの悪意であり、それが無造作に吐き出される器としてのネット、そこにストレスを撒き散らす安易な人間の逃避行動、といったものをどうにも重たく感じさせる何かが、この物語には込められている。

 サイコパスのような悪党が中途で放り出されてそのままというあたり、問題かと思われるほどのストーリーなのにも関わらず、テーマはより社会的な悪意に向けられ、ネットに向かう、ねじ曲げられた憎悪、内向する自己消失願望など、より嫌悪を感じさせる現代の病的な部分にスポットが当てられる。

 それらねじくれた心の弱さと闘うのが高校生の少女たちであり、少女たちの母であるわけだが、あまりにも女性の強さばかりが目立ち、男どもはこれと言った人間がほとんど登場しないあたりは、作品全体に散見されるバランス感覚の欠如といったところか。母たちばかりではなく、父たちだって、現実にはよく闘っていると思うのだが……。

(2004.3.14)
最終更新:2007年01月28日 23:37