すすきのバトルロイヤル



題名:すすきのバトルロイヤル
作者:東 直己
発行:北海道新聞社 2000.3.31 初版
価格:\1,300

 まだ東直己のファンでも何でもなかった頃、東直己作品に一冊も触れていなかった頃、本屋の店頭でこれを手に取った。札幌に住んでいると東京にはあまり出まわっていないローカル出版、とりわけ北海道や札幌を題材にした本には事欠かない。北海道そのもののファンでもあるぼくは、年中書店のこういったローカル・コーナーをうろうろする。ほとんど買わないのだけれど。

 そういう時代でも、この本は買おうかなと手に取ったのだ。何とも魅力的なネーミングに元プロレス者であった血が騒ぐ。しかも何となくいろいろとすすきのの裏話が書かれてあるということであれば、ぼくの日常生活とそう離れた話ではないのではないか。もしくはぼくのすすきのにおける日常生活をより豊かにしてくれる蘊蓄に耳を傾けたいな……等々せめぎあいがあり、そして結局そのときは買わなかった。

 でも、しかし、今はぼくは東直己ファンである。ただのファンではなく、かなりの濃いファンだと思っている。だから東直己の書いた文章に接するだけでも相当の歓びがあるのだ。ただでさえ入手しにくい東本であもある。下手するとすぐに絶版になる(失礼!)。とあれやこれやで、一も二もなくぼくはこの本を買い、読んだ。

 北海道新聞毎週木曜日の週末特集『おふたいむ』に五年間連載されたコラムより、70本選んで一冊に纏めたものが本書である。コラムというよりも、ぼくはこの作者の特異な人生そのものに興味があり、遅れてきた読者としてこの人は本当にススキノ探偵みたいないい加減な生活をしてきて、浴びるほど酒を呑んで、多種多様の職業を転々とsiてきた風来坊なのだろうかということを確認したかった。

 実を言うと、それほどそのあたりのことが確認できるわけではない。むしろ結婚していて(例え家庭内離婚の状況にあろうと)、子どもがちゃんと何人もいて、ということに驚き、さらにそれでも毎日夕暮れになるとバーに向かう無職の男というところが、ぼくには尊敬に値した。まさに昭和の世代の親父を地で行く遊び屋ではないか。だから結婚する前は、子どもができる前は、まだ風営法前は、まだソープランドがトルコと呼ばれていた頃は、きっとすすきの探偵の<オレ>にそっくりだったのに違いない。

 それはこのコラム集を読むだけでも確信できた。内容はちなみにかなり凄いです。「通(つう)」というやつです。

(2004.1.31)