冷酷な丘



題名:冷酷な丘
原題:Cold Wind (2011)
著者:C・J・ボックス C.J.Box
訳者:野口百合子
発行:講談社文庫 2017.11.16 初版 2017.12.22 2刷
価格:¥1,100


 ワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケット10作目。己のモラルで行動することを上司の意向よりも優先するためにトラブルに巻き込まれ、なかなか一所に落ち着かない彼のシリーズ、久々に手に取ると、何と元の場所に復帰している。

 密漁の取締や野生動物の保護が主たる仕事だが、常に凶悪な犯罪に巻き込まれ、同時に彼の環境変化がもたらす家族の物語がいつも重要なポイントとなる。

 さらに社会の掟の外に生きる親友の鷹匠ネイトが、ワンマンアーミー的存在となってジョーの世界に立体構造の複雑な影をもたらす。

 荒野のディック・フランシスなる呼称も冠されたことのあるこの作家だが、ワイオミングという野生の荒野にハイテク時代が着実に侵襲している「今」を描いて常に、上級なミステリー&アクションを供給してくれている信頼度抜群のシリーズだ。

 今回は、風力発電という新エネルギー開発の裏を抉る、という点が、実は風車の多い北海道人読者であるほくの好奇心をストレートに突いている点、作中に法定ミステリー要素を絡め、驚愕のラストに導いてゆく構成と、さらに上質化にブレーキのかからないこの作家のストーリーテリングが何ともたまらない。

 ネイトの物語とのダブルストーリーのクロス、そして次作に期待を向けさせるショッキングなラストシーンと、作者のエンターテナーぶりも充実。

 というわけで、次作のページを即座に開いてゆこうと思います。

(2019.1.19)
最終更新:2019年02月25日 16:28