ススキノ、ハーフボイルド



題名:ススキノ、ハーフボイルド
作者:東 直己
発行:双葉社 2003.07.25 初版
価格:\1,700

 『探偵くるみ嬢の事件簿』を思わせる、リラックスした雰囲気のススキノに、例の太った男、通称<便利屋>が絡んで、東直己ならではの夜中のススキノに、人間たちの欲望や哀しみのドラマが展開する。

 通常のススキノ便利屋シリーズであれば、それなりの人間的でハートウォーミングなハードボイルドになるところを、今回は敢えて、便利屋シリーズの外伝風に、しかも本来脇役でしかないはずの高校生の視点で捉えてゆく。高校生ならではの一人称の軽いタッチな文体。十代ならではの大人の世界へのドキドキ感が、何となく大人が読み返す自分の若かりし頃のようで、懐かしくもあり、切なくもある。

 通常の高校生よりは少しだけ生意気で、女と酒への扉はとうにすり抜けてはいるけれども、多少頭が良く、ませていて、傲慢さを自己満足に代える幼さも残る。そうした主人公を、言わば大人小説の書き手である作者がどう料理するかといったところに、プロの技術の味わいがあり、この作者ならではの旨味が見えてくる。

 ミステリーの核に迫らず、手の届かないもどかしさを主人公と一緒に体験しつつ、謎そのものよりも、謎をとりまく周囲の個性過剰な人物たちとの駆け引き、やりとり、そうしたススキノ人間絵図を楽しむことができると思う。

 ススキノ探偵シリーズの読者であれば、外伝であり、亜流でありながら、これも必読の一冊と言えると思う。そして願わくは本シリーズ(もちろん、畝原のシリーズも)への再会を早く果たしたいものである。

(2003.11.2)