限界点




題名:限界点
原題:Edge (2010)
作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver
訳者:土屋 晃
発行:文藝春秋 2015.03.15 初版
価格:\2,000-

 ジェフリー・ディーヴァーとは最近とんとご無沙汰だった。なぜかはわからない。そういう時期があるのだ。

 あんなに毎作楽しみに読んでいたのに。それも初めの頃から。作品が今ほどサービス精神に満ち溢れていなく、少し素朴で実直で、いろいろなテストを試みてはいい作品への模索を繰り返している作家、そういう気配が感じられるなかで、その前向きな姿勢と技術的に次第に洗練されて行く様子が興味深くてつきあっていた作家。

 リンカーン・ライム・シリーズで時代の寵児のようにもてはやされるようになり、この作家はその王道のセンターラインで作品をどんどん生み出し続けた。TVドラマ世界最大の視聴率を稼いだと言われるCSIシリーズがスピンオフ・シリーズを始めたように、リンカーン・ライムのシリーズも次々とスピンオフ・シリーズが登場し、科学捜査というジャンルは最早海外ドラマも小説もこぞって先端をゆくヒット商品となったかに見えた。そしてその勢いは今も止まらない。サイコ・スリラーから科学捜査へ。ミステリは現代というデジタルな時代を反映して多様化していった。

 本書は、まさにデジタルな時代の小説である。ボディガードとそれをつけ狙う殺し屋(ここでは「調べ人」という、まるで必殺シリーズのような職業名が使われているのだが)。証人保護プログラムで保護された個人やその家族を守るのとは少し違う、連邦機関<戦略警護部>に所属し依頼のあった個人を保護するチームであるようだ。

 デジタル時代というのは、ネット、携帯電話による電子の足跡が追跡される危険が常に主人公らを取り巻いているからである。チーム内での連絡方法まで考慮しなければならないばかりか、連絡すら許されない。ゆえに秀でた一人の警護官が必要とされる。

 捜査小説ではなく警護小説であるために、追跡者の魔の手が何度も彼らに襲いかかる。逆に、今回の追跡者は上司を殺害した曰くありげな<調べ人>。彼を仕留めようという復讐心も強い主人公という構図がある。

 そして何のためにこの一家を守らねばならないのか、家族の誰が狙われているのか、だれが<調べ人>に何のために仕事を依頼したのかが不明なままのガードであるゆえに、捜査、追跡、警護といった三つの要素をスーパーにこなさねばならないという警護官の緊迫が全編に漲る。アクションと緊張が交互に訪れるのだが、それらが過剰であるゆえに大変に疲れる。面白い、とうことは疲れるということでもあるのか。逆にもう少しワンテンポの休養がほしいのだが、それは警護官の仕事としては許されない。すべてが解決するまで、三日間の警護の仕事は絶対にレストレスなのである。ふう。

(2016.3.11)