死者は眠らず




題名:死者は眠らず
原題:No Rest For The Dead (2011)
作者:アンドリュー・F・ガリー Andrew F.Gulli,ジェフ・アボット Jeff Abbott, サンドラ・ブラウン Sandra Brown, トマス・H・クック Thomas H.Cook, ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver,ダイアナ・ガバルドン Diana Gabaldon, テス・ジェリッツェンTess Gerritsen,ピーター・ジェイムズ Peter James, J・A・ジャンス J.A. Jance, フェイ・ケラーマン Faye Kellerman, レイモンド・クーリー Raymond Khoury, ジョン・T・レスクワ John T.Lescroart, ジェフ・リンジー Jeff Lindsay,ゲイル・リンズ Gayle Lynds, フィリップ・マーゴリン Phillip Margolin, アレクサンダー・マコール・スミス Alexander McCall Smith, マイケル・パーマー Michael Palmer,T・ジェファーソン・パーカー T. Jefferson Parker, マシュー・パール Matthew Pearl,キャシー・ライクス Kathy Reichs, マーカス・セイキー Marcus Sakey,ジョナサン・サントロファー Jonathan Santlofer, リザ・スコットライン Lisa Scottoline,R・L・スタイン R.L. Stine, マーシャ・タリー Marcia Talley, ロリー・G・アームストロングLori G. Armstrong
訳者:北沢あかね
発行:講談社文庫 2015.02.13 初版
価格:\1,200


 ぼくはアンソロジーが好きである。オットー・ペンズラーなど、アンソロジストという職業があるくらい、世界にはアンソロジーの文化がごく当たり前に席巻している。短編集というと日本では個人作家のものが主流で、月刊雑誌で短編集シリーズなども抱え込んでいるためか、日本作家のアンソロジーは皆無ではないものの、権威として成立しているものは残念ながら見当たらない。

 その意味で名だたる作家が連なっているアンソロジーの中に、自分にとっての未開拓作家の秀作を見つけると嬉しくなったりする。日本もミステリ作家が林立しているだけにそういう権威あるアンソロジストによる信頼のおけるアンソロジーが期待される。

 ちなみに、アンソロジー【anthology】を国語辞書で調べると「いろいろな詩人・作家の詩や文を、ある基準で選び集めた本。また、同一詩人・作家の選集。詞華集。佳句集。名文集」とある。

 閑話休題。さて本書はアンソロジーではない。26人の作家によるなんと一つのミステリ小説である。かと言って、連作短編集ですらない。章ごとに作家が書き継いだ一遍の長篇ミステリ小説なのである。そもそも癌の慈善団体への寄付を目的とした共著による一作の長篇小説が企画されたそうである。

 日本での有名どころといった作家では、ディーヴァー、クック、アボット、ケラーマン、マーゴリン、パーマー、T・J・パーカーなどと言ったところが人気陣であろうか。ディーヴァーなどはこの企画を聴いたときに飛びついたというだけあって、小説の重要どころを二か所ほど任されている。

 どのように取り決めがあって、どのように書き継がれたという説明はどこにもないのだが、一作の小説として大きなツイストもあるが、短編小説のように作家の個性は出にくいと思う。それでもニヤリとしたくなるような、特徴ある作家の語り口に触れながら読み進む不思議な長篇小説の味わいは、これはこれでなかなかのものだ。

 きっとどの執筆作業でも緊張を強いられたであろうプロフェッショナルたちによる、(本の帯によれば)「ミステリ版We Are The Word!」である。お祭り気分で楽しむと良い一冊である。

(2015.05.13)