回廊封鎖




題名:回廊封鎖
作者:佐々木譲
発行:集英社 2012.08.10 初版
価格:\1,600



 人生においてサラ金から金を借りたことはないのだが、それは運がいいのか、貧乏でも頑張ったからなのか、どちらなの? と聞かれるとよくわからない。ただ大手金貸しの竹○○が倒産したとき、何かあるなと思ったのは確かである。この小説ではそうした企業倒産の裏側で逃げ出した経営者への不当相続などの途轍もなくグレーな背景を浮き彫りにし、なおかつ警察キャリアの天下り先としての機能が、不当利益の経営者たち個人への流出を許したのではないかという疑惑に眼を向けた鋭い題材を取り扱っている。

 いかにも佐々木譲らしい正義感溢れる一作である。道警裏金問題を背景にした『うたう警官(文庫化の際「笑う警官」に改題)』に始まる道警シリーズにも見られる、社会悪に対する個人の正義を、まさにペンの力で戦い取ろうとする作者の意欲ある作風が本書でも息づいており、小説の世界でだけ得られるカタルシス(浄化作用)がなんとも言えぬ味をもたらす。

 元、大手金融機関の支店長クラスが狙われるという事件が連続する。それぞれが過去に犯した罪を償わされているのではないかと踏んだ捜査官たちは、犯人グループに迫ってゆく。一方で犯人グループは、もっと大きなターゲットの命を狙う計画を綿密に練りあげてゆく。

 狩られる側と狩る側、あるいはそのどちらにも立場を置く犯人グループ。この三つの組織の思惑がそれぞれに同時進行することで盛り上がってゆくサスペンスが読みどころである。読者としては犯人グループを応援したくなる構造でありながら、刑事たちの捜査の手は迫ってくるし、大物ターゲットは周囲に危険な護衛を用意する。

 地獄を見た男たちの一世一代の復讐活劇が、これ以上ない大舞台で待ち受ける。大舞台とは、六本木ヒルズをモデルにしたらしい六本木ステイツなる巨大複合施設ビルのことである。この精緻かつ警備の厳しい回廊のような空間で何が待ち受けているのか。手に汗握る活劇、予想を裏切る突発的展開に、振り回されること間違いなしの骨のあるアクション作品である。

(2015.01.08)