カルニヴィア 2 誘拐




題名:カルニヴィア 2 誘拐
原題:The Abduction (2014)
作者:ジョナサン・ホルト Jonathan Holt
訳者:奥村章子  
発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.9.15 初版
価格:\1,800

 『カルニヴィア』三部作の二作目。紛らわしいので、原題どおりの出版を望みたいのだが、何故か邦題では予定でしかない三部作を一作目から歌うから、大作の続きもののように勘違いしそうだ。でも一作一作は独立した長編小説であり、原題では数字も<カルニヴィア>という文字も振っていない。誤解されやすい翻訳はご遠慮願いたいものだが。ましてや、せっかくの見事な作品の出来栄えを見ると余計に老婆心が疼きそうだ。

 とは言え、物語は独立してはいるものの、主人公たち四人の男女関係は微妙に変化しているので、できれば順序よく読んでもらいたい。つまりどんなシリーズ小説だって同断。順序よく独立した物語を紡いでもらったほうが楽しめるのは当たり前の話だ。

 というわけで、二作目のラストで、ヒロインの一人憲兵隊大尉カテリーナが上司ピカーロと不倫の関係にピリオドを打つシーンが印象的であったが、その後の二人の距離感は本書ではさらに意味深なものとなる。捜査にまで影響を及ぼしそうになるのは、人間、男と女、そうした捜査官の属性として欠かせないものとしてストーリーのおかずにはなっても邪魔にはならぬだろう、といったところか。

 一方、俄然進展を見せるのが、いわゆる引きこもりの典型であるダニエーレ・バルボに芽生える外界との交流の兆しである。とりわけ米軍少尉ホリーとの仲に注目である。なるほど物語のサブストーリーとしてはこちらも見逃せない楽しみであろうか。

 さてメインのストーリー及び題材である。一作目はボスニア紛争とNATOの思惑といったところに国際政治の、今や昔懐かしい謀略、諜報戦といった大きなテーマを扱って世界に話題を読んだこのシリーズであるが、二作目の本書では、米軍のアフガニスタン侵攻に題材を取り、世界でも報道された米軍側の捕虜虐待の有名な映像をモチーフに、反米イタリア活動家によるネットでのアジテーション活動を狙った少女誘拐事件を扱っている。

 ネットとはまさにダニエーレの創成した<カルニヴィア>というベネツィアそっくりの仮想都市であり、検閲不能な匿名メッセージを可能とする電子世界である。しかし誘拐は実際に起こり、その狙いは米軍基地反対活動家たちによる、米軍の拉致拷問批判の広報活動のようにも思える。しかし、国際謀略世界はそんな単純なものでは終わらない。裏には裏が。糸を引く者を操るさらに謀略家の気配。

 前作に続いて仕組まれた事件であり仕組まれたシナリオであるその闇の奥に、四人のヒーロー&ヒロインたちは辿り着くことができるのか、といったところがこの大作の読みどころ、解きどころなのである。

 今の時代に、あの時代を振り返る小説として貴重であり、最新現代史を読み解く歴史的事実を食材にした激辛グルメのようなこってり味のプロットである。消化しにくいほどの大量な具材は、紛れもなく北イタリアにかつて投下された爆薬たちの火薬の匂いに満ちており、危険である。驚愕の事実がたっぷり詰め込めれた歴史ミステリーとしても興味深い、大スケールの二作目に舌鼓を打った読者ならば、是非とも三作目の大団円を、共に期待してみようではないか。

(2014.11.06)