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復讐のトレイル


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題名:復讐のトレイル
原題:Blood Trail (2008)
著者:C・J・ボックス C.J.Box
訳者:野口百合子
発行:講談社文庫 2014.08.12 初版
価格:\910

 この本だけを読むと、C・J・ボックスは、まるでスティーヴン・ハンターみたいな銃撃冒険小説の名手とでも誤解されてしまうかもしれない。ハンターは本当に銃器に詳しい銃器小説の名手であるけれど、実はボックスの方の主人公は銃の扱いも下手だそうだし、ボックスという書き手は、アクション小説というよりも、現代版『大草原の小さな家』を書きたい部類なのかもしれない。それも男性版のそれを。

 現代版の小さな家の物語は実際のところとてお皮肉に満ちている。家を守るという意味では、経済的には主人公の猟区管理管ジョー・ピケットよりも、起業して当てた夫人メアリーベスの方がよほど的確な位置にいるかもしれない。ジョーの方はいつでも暴力や悪を呼び込んで家族を危険に晒すばかりだし、職場での上司との関係もまるでついてない。

 だが、この作品だけを読めば、タイトル通り血なまぐさい連続射殺事件を扱った銃撃アクション小説のように、珍しく派手な展開で綴られたエンターテインメント性の高い冒険小説のように見える。珍しく、殺人者側からの視点で、文学性を意識したような語り口、照準を合わせて銃撃、そして残虐な死がごろごろしている。

 捜査において悲惨な結末を迎える犠牲者も出てしまい、前半は狙撃という暗い側面ばかりが目立つ感が強い。しかし、ピケットは上司や州知事との駆け引きでネイト・ロマノフスキーを監獄から出すよう要請、狩猟者には狩猟者をぶつけるという危険な作戦に出る。ネイトとジョーは信頼関係で結ばれているものの、無法性の高い友人にはヒヤヒヤさせられるし、ハンターばかりが狙われて処刑されるという陰惨な事件の裏側に潜む真実を突き止める一連の流れについては、やはりサスペンスに満ちたボックスという作家の語り口の巧さが目立ってくる。全編に流れる緊迫感もまた然り。

 フーダニットの犯人像は二転三転するし、上司たちとのトラブルや駆け引き、家族との距離感、特に娘たちの成長に伴う実生活の悩み等々、アメリカ版ディック・フランシスと呼ばれる決めの細かさはボックスならではのものである。どの作品も一定レベルの高みで提供してくれる確かさこそが、ワイオミングの大自然を舞台にした荒野の一匹狼ジョー・ピケットの魅力を一作ごとに新たにしてくれるのである。

(2014.10.28)