ローマで消えた女たち

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題名:ローマで消えた女たち
原題:Il Tribunale Delle Anime (2011)
作者:ドナート・カッリージ Donato Carrisi
訳者:清水由貴子
発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.6.15 初版
価格:\1,900

 無国籍のエンターテインメント大作『六人目の少女』で凄まじいデビューを飾ったイタリア人作家カッリージの長編第二作である。のっけからあれほどのアイディアを詰め込んでしまった彼が、第二作をどのくらいの意欲と自負とで書き始めたのか想像もつかないが、大抵の作家であればあのデビュー作を超える二作目というだけで、恐怖に震えそうだ。

 そうした周囲の期待を背負って作り上げねばならなかった本書は、作者がそうした期待にしっかりと応えるこれまた印象的な作品であり、さらに作者があとがきで書いているように、二つの大きな興味深い題材を何としても小説化したかったという確かな動機に支えられて生まれたものであろう。

 二つの題材の一方は探偵や諜報員のように動くバチカン内部の捜査官たちの存在である。法に縛られず、時には処刑さえも行う内赦院所属の<闇の狩人>たち。さらにデータベースとして実在するらしい罪の記録保管所で分析される悪の記録。こうしたものが小説の中では教会の送り出す追跡者たちという存在として浮き彫りにされる。

 もうひとつの題材は、生物変異型の連続殺人犯、というまるで映画『遊星からの物体X』のように、殺人の獲物になりすまして生き続ける存在である。映画と違うのは、捕食者がエイリアンではなく、あくまでも人間であるということのみである。その存在はとてもわかりにくいものだが、小説内のあまりにも目立つ伏線によってじわじわとにじみ出てくる恐怖や悪寒そのものと言ってよさそうな嫌悪すべき存在である。

 善と悪の代表型のような以上二つの存在の対立が、物語中で大きくツイストをすることで、ものごとは見たままのものではなくなり、より深い部分を見つめなければ真実が見えない構造として作品全体の迷宮性はさらに強烈に読者の眼をくらまそうとする。

 この作家は小説構造を最初に建築学的に設計するところから始めるタイプの人なのかもしれない。そのくらい精密な計算された物語のパズルで全体が見え難くなっているために、一作目も二作目もスリリングで謎に満ちているのだ。

 この凄腕のストーリーテリングは、巻末最後の一行まで続いてゆく。続編があってもおかしくはないほどだが、やはり続編はいやだなあと鳥肌が立つあたりで、本書の存在感が改めてぞわりと感じられるほど。犯罪小説の好きな方、犯罪という人間のある断面を見つめて、新たな物語の地平に驚きを発見して頂きたいものである。

(2014.10.28)