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アンダルシアの友


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題名:アンダルシアの友
原題:Den Andalusiske Vannen (2008)
作者:アレクサンデル・セーデルベリ Alexander Serberg
訳者:ヘレンハルメ美穂
発行:ハヤカワ・ミステリ 2014.1.10 初版
価格:\2,268

 北欧ミステリーが注目。デンマークの『特捜部Q』シリーズも凄いが、スウェーデンも『刑事マルティン・ベック』シリーズ以来くらい『ミレニアム』(未読)は大ヒットするし、ぼくの好きなところではカーリン・アルヴテーゲンの女性作家も外れがない。最近北欧ミステリが盛んに邦訳され人気を得ているのは日本のことであるが、ヨーロッパでは北欧、特にスウェーデンのミステリはそもそも人気があり、よく読まれているという。

 社会批判や体制批判はミステリという形でなされるものが大変多く、日本のように純文学から隔てられ区分されず、純文学としてミステリはワンランク高い社会的文化的ポジションを確立しているのだと言う。貧富の差、権力の強さに対し、平凡な仕事に従事している人が対決してゆく姿勢が同感を呼ぶとも言う。

 さて、本書であるが、そうした背景の中では異質であるかもしれない。何よりエンターテインメント色が強い。活劇によって綴られる大作であり、血と銃弾によって糾われる暗黒界の二大勢力の死闘に、巻き込まれるのがひとりの美人看護師であるところが風変わりではある。入院していたボスの息子がヒロインであるナースに恋をし、自分らの輪の中に引き入れてゆくのだ。必然性というよりも、そうした偶然の構図によって成される別世界の出会いによって、物語はさまざまな軋轢を起こし、多くの輩が、骨が軋むような激突を繰り広げる。一言で言えば派手な世界だ。

 二大勢力だけが注目されるのかと思うと、ここに特殊な警察部隊が登場する。二大勢力の争いの現場を捜査の立場として仕切る特殊チームが、リアルさに欠けるくらいに、思うままに権力を奮う。暴力のプロを雇う警察なんて笑い話みたいだが、本書では、内部争いにも余念がない、まるでジェイムズ・エルロイの描いたLAPDみたいな悪徳警官たちの死闘が繰り広げられる。こいつが案外、物語に仕込まれた導火線みたいで、読む側には面白い。このくらいやってくれる小説ならば、それはそれでいい。

 分厚い時間と空間を使って、個性的な人間を配置し、緊張感を緩めず、疾走感を持ってストーリーをテリングする。スウェーデンのミステリは、理屈ばかりではなく、<物語る>術においてとても優れているのだとは、最近北欧小説を読み漁ることに楽しみを見出しているぼくの総合的感覚である。三部作の一部だと言う。これだけ生死の境をくぐり抜けた看護師がまだまだ大きな試練に晒されるとは、やれやれ、先が思いやられる話である。

(2014.6.23)