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六人目の少女




題名:六人目の少女
原題:Il Suggeritore (2009)
作者:ドナート・カッリージ Donato Carrisi
訳者:清水由貴子
発行:ハヤカワ・ミステリ 2013.1.15 初版
価格:\1,900

 不思議だが、国籍のない作品である。イタリア発の作品ではあるけれども、物語の舞台はどことも取れない。作者はいつの時代でもどこの国でも通用する時代や場所にとらわれない物語を書きたかったらしいのだ。いわば人類共通の物語というものを。

 そうした思いを抱く作者にとっては幸いなことに、この作品は世界23ヶ国で翻訳出版され、バンカレッラ賞、フランス国鉄ミステリ大賞、マッサローザ文学賞、カマイオーレ推理小説賞、ベルギー推理小説賞、地中海推理小説およびノワール小説フェスティバル大賞などいくつもの多国籍に渡る賞を受賞している。イタリア版『羊たちの沈黙』とさえ語られ、ヨーロッパ各国でビッグヒットを飛ばし、ロシア、ブラジル、ヴェトナム、イスラエルでも出版された(日本はなんとこの動きにたっぷり遅れをとっているわけだ、なんという文学的更新国家なんだろう)大物小説である。

 ある森の中で6組の少女の腕が発見されたことから、連続殺人の存在が明らかになり、物語は幕を開ける。捜査陣の代表は、失踪人搜索のエキスパートであるミーラ・ヴァスケスという過去のある美人刑事である。警察組織外から犯罪学者であるゴラン・ガヴィラという個性的な専門家が呼ばれる。ステルン、クラウス・ボリス、サラ・ローザと、一癖も二癖もある捜査官たちがチームを成す。

 事件は一人一人被害者が明らかになってゆくが、六本目の腕の持ち主が判明しない。まだ生きているかもしれない被害者を探す時間的制約のある捜索の中で、いくつもの真相にたどり着くのだが、そこには別の犯罪者ばかりが残され、真の犯人は見えてこない。一つ一つの被害者を探すことで、次々と、意外な犯罪者の存在が浮き彫りになるという複雑な構造の中で、真犯人は警察を引きずり回してゆく。

 どこを切っても面白さの切り口しか見えてこない、弛緩のないジェットコースター小説であり、それとともに謎解きの面白さ、人間同士のぶつかり合い、騙し合いなどが豊穣な物語の厚みを読者にもたらす。また、ヒロインであるミーラの過去の深みが印象的であり、この小説の極めつけの武器ともなっている。

 刑務所内の報告書や、拉致被害者と思われる少女の独白などが、ストーリーの合間に挟まるが、それがどうメイン・ストーリーに絡み合ってゆくのかなかなか見えにくいままで思わせぶりに進んでゆくのだが、いずれももちろん周到な伏線である。ここまでツイストにツイストを重ねた物語はなかなか知らない。ジェフリー・ディーヴァーのリンカーン・ライム・シリーズに似た展開の面白さとスリル、『羊たちの沈黙』のサイコな展開、時効との戦いなどなど、およそミステリの持つ娯楽要素を満遍なく詰め込んだ圧巻の傑作小説である。

(2013.09.26)