虚像の道化師 ガリレオ 7


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題名:虚像の道化師 ガリレオ 7
著者:東野圭吾
発行:文藝春秋 2012.08.10 初版
価格:\1,350



 ガリレオ・シリーズの短編集とわかっているので、買うのにためらうすれすれの線である。ちなみに文庫本ならためらわずに買う。内容の面白さは保証されているから、読まないというのは惜しいように思う。しかし『聖女の救済』と一緒にガリレオの短編集『ガリレオの苦悩』が出版されたときは長編の『聖女……』だけを手にとって、短編集の方は買わずにこらえた。文庫化を待てばいい、と思った。

 そのときもいろいろちまちましたことを考えた。短編集というものは、書き下ろし長編と違い、通常、雑誌に掲載されたものをまとめているために、手垢のついたものが多い。だから鮮度が命ではないのだ。だから文庫化されるのを待って読んでも別に構わないだろう。そんな思惑。

 しかし、本書くらいの手頃なソフトカバーであれば、一旦は伸ばした手を留めるものの、ああ、でもガリレオだ、読みたい、しかもドラマ化の2シーズン目が始まっている。テレビでネタを知ってしまう前に本で読んでしまいたい、というこれまた違った考えが脳裏をよぎるのだ。そんなわけで1,350円という値段を吟味する。今時、海外ミステリの分厚目の文庫なら1200円越えはざらであることを思う。上下巻本の場合2000円弱程度もざらであることにまで思い至る。最近買っているポケミスも最近は厚手になり1700円以上の値段がついている。そう考えると、そう高くない。結果的にぼくはこの本を手にしてレジに向かう。以上、余計なことかもしれないが当人にとっては重要でデリカシーに満ちた微妙な決断。

 そして期待されたコスト・パフォーマンスに答えてくれるのが、このガリレオ・シリーズなのである。本書でも物理学者でなければ興味を示して回答を寄せてくれないような奇妙な事件が4本収録。触らずに人を奇行に追いやり自殺される宗教教団。死や殺人に追い込む幻聴被害の相次ぐ職場。別荘地の殺人現場の不可解な状況。女優が仕掛けた事件現場の罠と、それをツイストさせる真実。どれも一筋縄ではゆかない仕掛けと、人間関係の心の綾のようなものが描かれる。時には優しさが犯罪の真実のキーワードになっているあたりも、東野節の真骨頂といったところか。

 短編作品は忘れやすい。ドラマ化されたものと合わせて楽しむことで、印象が深まり、もしかしたらそのあたりの問題快勝に繋がるかもしれない。ドラマ化を嫌う傾向が強かったぼくだが、もはや福山演ずる湯川が小説でも目に浮かぶようになってしまった。小説と映像がしっかり連動している事実においてはさして罪深きことでもないのかもしれない、と最近は思うようになった。脇役の原作と異なる点に関する違和感は別として、であるけれども。

(2013/06/17)