サトリ





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題名:サトリ 上/下
原題:Satori (2011)
作者:ドン・ウィンズロウ Don Winslow
訳者:黒原敏行
発行:早川書房 2011.03.25 初版
価格:各\1,600

 書店の平積みコーナーを見てびっくり。東野圭吾の『真夏の方程式』が早くも3刷となって何列もの平積みを作っているのは予想通りとはいえ、ドン・ウィンズロウの『サトリ』上下巻が、まるで村上春樹の新刊のように東野圭吾を超える勢いでいいコーナーをシェアしている風景には驚いた。

 実は『サトリ』を読了したばかり。睡眠時間の確保すら危ういほど自分の時間が持てなくなっている昨今の生活の中で、本を読む時間はさらに持てなくなっている状況を、少しでも改善しようと、昨夜は3時過ぎまで『サトリ』の読破に費やしたのだ。でも最後の20ページが読めずに、体力が尽きて、読み終えたのは今日。

 ウィンズロウにしてはクライムでもハードボイルドでもなく、殺し屋青年を軸にした冒険小説なのだがトレヴェニアンという稀代の冒険小説作家の作り出したニコライ・ヘルという東洋人の魂をもった西洋人を書き継いだ(むしろオリジナルの『シブミ』の前日譚になるのだが)傑作国際活劇小説である。

 少しもウインズロウらしさが失われておらず、何よりもその語り口がいつもどおりなので、トレヴェニアンを読んだことのないぼくのような読者でも、しっかりしたウインズロウの作品として手に取り、楽しむことができる。

 しかしこの平積みの状況は何としたことだろうか。おしゃれな本を求めたやってきた今風のアゲハギャルみたいなまさか字を読むわけではないよな。長谷部の『心を整える』に影響された何かを整えようとする人たちが読む対象とする本でもないよな。実用的という意味では、全然その気配のない作品だし、あえて言えば短い文体による簡潔でスピーディな、ウィンズロウ特有の読みやすさ。そしてクールでライトでしかも迫力のある活劇の語り口。あるいは上下巻を別色に刷ったことによる平積みでの目立ちか。まるで村上春樹の『ノルウェイの森』がクリスマス・プレゼントとして売れた頃みたいに(ノルウェイは赤と緑のどぎついカバーでまるで、ラッピングされたクリスマスプレゼントのように、まさにクリスマスに売り出され、大ヒットとなった。小説の内容は暗くてエッチでちっとも大衆受けするものではなかったのに…)。

 いずれにせよ、どんな形であれ、どんな理由であれ、海外の冒険小説が、今こうして目の前に平積みにされ、多くの異人種によって手に取られようとしている。なんだか、わくわくするじゃないか。

(2011/06/27)