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凍った太陽 高城 高全集 2





題名:凍った太陽 高城 高全集 2
作者:高城 高
発行:創元推理文庫 2008.06.27 初版
価格:\900


 2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比較的陽の当たった作品を収録しているようだ。

 ちなみに第三巻『暗い海 深い霧』は、北海道を舞台にした短編を収録。とりわけタイトル通り、深い霧に包まれた、年間日照時間の最も短い街・釧路を舞台にした作品が大半を締める。未読の第四巻『風の岬』は、それらの範疇から外れた作品、陽の当たらなかった作品などをまとめたものであるようだ。

 本書は、デビュー当時、即ち1957年の北海道新聞社入社以前の仙台在住頃の作品に加え、北海道を舞台にした作中有名なもの、シリーズものなどを収録している。

 シリーズものとは、いわゆる悪女ものである。志賀百合というクールな謎の美女の出る四作は注目。特にフェンシングを得意としていたらしい作者らしく、フェンシング試合中の事故の真相と疑念の『賭ける』に始まり、札幌を舞台にした『凍った太陽』、ヘミングウェイがリヨン駅で盗まえたという原稿の行方に絡んだミステリ『父と子』、スペイン、バスク地方を舞台にした『異郷にて 遠き日々』と通して、志賀百合という死に囲繞されたような宿命を持つ女性の、波乱と冒険に満ちた一代記を見ることができ、興味深い。

 さらに私立探偵小説としてシリーズ化を望みたくなるような『冷たい雨』。珍しく私立探偵が登場するのだが、石原次郎という閑古鳥が鳴いているような事務所に始まる厭世観に満ちたような空気が、何だかフィリップ・マーローみたいで、懐かしい。昭和30年代ならではの殺伐感と戦後への期待感が交錯したぴりぴりした街の気配が、鋭い文体で抉られる。

 実際、この本は、釧路をはじめとした道東旅行中に読んだのだが、『美しい草原に』はその釧路のバーを舞台にしたまるで日活アクション映画みたいだ。

 さらに『ラ・クカラチャ』という短編は、米軍占領下の街で、最底辺の生活と生存を描くハードボイルド。ラ・クカラチャがゴキブリの意味だとわかったのはこの短編により、それをハワイ旅行の折、妻に話しながら、ラ・クカラチャは英語に化けた時にコックローチになったんだ、と気づいたりした。

 という具合に私的には、自分の私生活とも関わって忘れがたき短編集となったものである。

(1956.05.05)