葬儀屋の未亡人



題名:葬儀屋の未亡人
原題:The Undertaker's Widow (1998)
作者:フィリップ・マーゴリン Phillip Margolin
訳者:加賀山卓朗
発行:早川書房 2000.1.15 初版
価格:\1,900


 相変わらずのジェット・コースター・サスペンス。政敵。不可解な殺害現場。謎多き家族。夫婦の葛藤。主人公である判事の試練。人間味のある刑事二人組。血痕鑑定。

 この作家にしてみれば地味めなプロットでありながらこれだけの食材で料理された逸品である。どちらかと言うと本格推理じみたフーダニットである点が気になるけれども、随分とマーゴリンは人間を描くことに重心を置くようになった。

 思いも寄らぬサービス満点の展開はそれでもマーゴリンのもの。二転三転する真実の正体はかなり深奥まで足を踏み入れないとあらわになることがない。

 リーガル・サスペンスの中でも、エンターテインメント性の強い作家と言われる。ここまで外れのなかった作家だと断言できる。まぎれもなくプロットのひねりということに焦点を絞った書き手でもある。

 こういうミステリは映画化するならブライアン・デ・パルマがいいだろうなあ。『殺しのドレス』や『ミッドナイト・クロス』など、ヒッチコック風サスペンスを撮っていた頃の、あの脂の乗っていたデ・パルマが。

(1996.07.17)
最終更新:2013年04月30日 00:01