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ファイアフォックス・ダウン





題名:ファイアフォックス・ダウン (上/下)
原題:Firefox Down (1983)
著者:クレイグ・トーマスCraig Thomas
訳者:山本光伸
発行:ハヤカワ文庫NV 1991.6.30 初版 1991.7.15 2刷
価格:各\520(本体\505)


 前作の爽快感を全否定してしまうかのような書き出しで本書で始まる。無理のない続編で、しかも驚いたことに前作の面白さがそのまま繋がってゆく。トーマス作品を作品発表順に読んでゆこうかと思ったが、どうしてもファイアフォックス事件はまだ終わってはいなかった、というフレーズに載せられて続けて読んでしまった。続けて読むと不思議なことに前作との切れ目がなくなってしまう。ストーリーそのものが長くなり、主人公ミッチェル・ガントの冒険行がさらに奥深いものになってしまうということになる。そういう意味では素晴らしく成功している続編と言えるのではないだろうか?

 ただし問題点はある。訳者が違うために、日本語文体が変わってしまっていること。ぼくとしては山本光伸氏の訳の方が遥かに優れていると思ったのだけど。それから物語がスケールアップして、キャクター量が何倍にも増えたために、前作のシンプルなリズムがややこってりぎみに変わってしまっていること。この辺は連続して読んでみないと気がつかないかもしれないけど、確実に作者の側に6年という作家キャリアの時間が経過しているのだから、当然と言えば当然の話なのである。

 しかしの程度の問題をクリアして余りあるくらい、この本は面白い。ここまでの危機の多さは、前作とプラスされるのだから少ししつこいかな、暗いは思うのだが、オーブリーの計画自体がそもそも非常に困難なものであるのだから、このくらいみんなが苦労して犠牲がいっぱい出ないと、ファイアフォックスなんて盗み出せないのであろうとも思う。凄いな、と思うのは何よりも緊張の持続度なのである。全然弛みがないのには驚く。それというのも次から次に訪れる危機という危機が、このサスペンスを盛り立てているのだが、あちらこちらでよくもこう悪条件が揃ったものだというのも、率直な感想である。

 はらはら気分をずーっと持続して読んだ後も神経がだいぶ疲れた気がする。冒険小説ファンはもともとそういうものをマゾ的に求める部分があるのだろうけれど、魅かれる人はぜひ読んでください。いややはり冒険小説マニア必読のシリーズと言っておきましょう。

(1991.09.15)