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すべて灰色の猫


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題名 すべて灰色の猫 (上/下)
原題 All the grey cats (1988)
著者 Craig Thomas
訳者 山本光伸
発行 扶桑社ミステリー 1991.6.27 初版
価格 各\560(\544)


世に「つなぎの作品」と言われる本書だから、よほどひどいのかと思ったらシリーズをずっと通して読んでいるぼくには、特につまらない本ではない。むしろ、こいつはシリーズとして読むためには絶対通過しておかなければならない物語であるではないか。『闇の奥へ』の続編であるが、これはバビントンやカプースティンという前作での敵たちの巻き返しのストーリーであり、また『ウインターホーク』のプリャービンの後日談でもある。要するにキャストはみんなつながっているのだ。

ただ一人ハイドだけがアフガンに再び単独潜入しているらしく見当たらない。ここでの主人公には何と『狼殺し』のリチャード・ガードナーの息子ティム・ガーディナー (訳者が違うのでちょいと姓がこんがらがる) を据えている。シリーズを楽しむ者にはサービスみたいなものだろうけれど、オーブリーにこういう法廷被後見人を設定するならどこかここまでの作品でやっておけばいいのに、とも思った。こ
れは『闇の奥へ』でのポール・マッシンジャーなどの存在にも言えることで、サービスぶりはいいんだけど、あまり都合よく関係者を増やされるのもどうかなあ、とさすがに疑問は感じてしまうのだ。

ここではブリギッテ母子という何だか船戸与一の小説に出て来そうな情念の親子が作品に色を添えていて、この辺が真新しい雰囲気である。話はネパールをソ連の同盟国にというような陰謀なのだが、ネパールの価値を考えてみるとあまりリーズナブルな謀略とは言えない点など、かなりインスタントな作品に見られがちだと思う。それでもこれだけオーブリーたちが追い詰められ、証拠が消され、サスペンスが盛り上がり、というトーマスならではの一編のストーリー・テリングの充実ぶりは、国産作家には望むべくもないところである。

ここまで読んできて気がつくのは、クレイグ・トーマスって基本的にそのストーリーは大変面白いということなのである。しかしこれだけ作品評価がでこぼこなのは、ひとえにキャラクター描写が独特のもので、そのあたりのリズムがまた作品によって不安定であるせいではないか、などと思われる。この作品でも敵たちは決して滅ぼされるわけではなく、主人公もその親父の運命そのままにどこぞの異国へと消えて行ってしまうようだ。すべてのものに決着を着けないままに一つの冒険行が終わってしまうトーマスのストーリーが果たしてこれでいいのかどうか、は問われるところだと思う。

逆に大河ストーリーとしてシリーズを追ってみるしか、今のトーマス作品は読みようがない、と断言してしまった方が楽なのかもしれない。

(1993.02.11)